虎ぶる!!
12
「あれは多分脅しでしょう。おかげで今は何ともないですよ。」
「脅し……?」
「ええ、何か……言われたくないことがあったんだと思います。」
「言われたく、ないこと……。」
神崎が喋ること信じるっていったから?
でもそれはなんか違う気がするんだよな。
信じるって言っただけで、知られたくないなら喋らなきゃいいわけだし。
わからねーな……。分からねーから、余計に怖い。
「やっぱり、あれからラージ様とお話になってないんですね?」
「うっ……。」
考え込んでいたら神崎にはバレていたようだ。
図星を突かれて言葉に詰まる。
「……もし、晃様が怖いと仰るなら……。」
そこで言葉を切った神崎はゆっくりと立ち止まる。
俺も同じく足を止めて神崎を見たら、さっきまでの笑顔が嘘のように真剣な表情をしていた。
「……な、に……。」
「ラージ様を、虎を何処かに引き取って貰いましょう。」
「っ!!嫌だっ!!」
その言葉を聞いた途端、自分でもビックリするくらいデカい声がでてハッとする。
咄嗟に出た言葉だけど……そうだ俺、ラージのこと怖いって思ってたけど、もう会いたくないとは一度も思わなかった。
側にいるのが当たり前のように感じてたけど、神崎に言われて離れたくないんだってことに気付いた。
なら……このままじゃ嫌だっ。
「帰るっ!」
「やれやれ……。」
俺は神崎を置いて走り出した。
後ろから呆れたような溜め息が聞こえたけど、少しはこいつのこと感謝してやろうと思った。
早く家に帰りたくて、ラージに会いたくて必死になって走ってたら、角を曲がろうとしたとき何かに衝突してしまった。
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