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虎ぶる!!
10


 ラージのせいで変わったことはたくさんあるけど、不思議とそれが嫌だと感じたことはなかった。


 久しぶりだったから話しが弾んだせいかもしれない。

 あれからずいぶんと話し込んで、家についたころにはもう太陽が顔をのぞかせていた。

 ドアノブに手をかけ、いつもより重く感じる部屋の扉を開ける。


「……なんだ…………これ……。」


 少し俯き加減で入ってすぐ、信じられないものが見えて眉間に皺を寄せる。

 扉のすぐ近くの床に、飯の入った食器が置いてあった。

 使用人に頼んだラージの飯だろうけど、手をつけた様子はなく冷めているのが見るからに分かる。

 でも俺の機嫌が悪くなったのはそんなことじゃなくて、なんでここに置いてあるのかってことだ。

 神崎はいつもテーブルの上に並べていたのに。

 チラリとソファーの上を確認すると、相変わらず伏せている虎がいる。

 飯も食ってねーし、流石に心配になってきたけど……やっぱり近寄ることはせず寝室に入った。

 長時間の外出は久しぶりだったから俺はその辺に服を脱ぎ捨てベッドに飛び乗り、そのまま眠りについた。


 携帯の着信音で目が覚めた時は昼過ぎだった。

 相手は珍しいことに神崎からで、メールだった。

 少し散歩しませんか?と。

 普段の俺なら当然断ってる。いや、そもそも神崎がこんなこと言ってくるなんて初めてだ。

 この部屋にずっといたくないし、いたとしてもどうすればいいのか分からない。

 俺は返事を返してから支度して部屋を出る。

 もちろんラージは相変わらずだった。


「昨日は他の使用人に頼んだそうですね。」
「……あぁ。」


 神崎と並んで、どこに行くでもなくその辺をぶらぶら歩く。


 

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あきゅろす。
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