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虎ぶる!!



 仰向けに倒れた神崎の上には白くて大きなものが乗っている。

 それが何か理解した時、心臓が痛いくらいにドクンッと脈打った。

 風を感じたのは多分ラージが横を通り過ぎたときのもので、その勢いで神崎に飛びかかったのだ。

 毛を逆立てグルルルと唸り続けながら、逞しい前足で肩を押さえつけた人間を間近で見下ろしている。


「ラージっ、やめろ!何してんだよ!!」


 俺は慌てて駆け寄りラージの体を押した。

 しかしいくら力を入れてもその場から動くことはなく、焦りで手に汗が滲んでくる。


「ラージっ……ラージィ!!」


 汗で濡れた手が滑って白い巨体にぶつかってしまったけど、そのまま腕を回してしがみつき必死に名前を叫んだ。

 唸り声が聞こえなくなって腕の中の虎が動く気配がしたから恐る恐る身体を離す。

 そのままラージはこちらを見ることもなく部屋の中に入ると、ソファーに飛び乗って伏せてしまった。

 突然の出来事に混乱する頭でラージを見ていたが、近くから呻き声がしてハッと神崎の方を見る。


「だ、大丈夫か!?」
「ええ……っ、爪は立てなかったようですので。」


 確かに神崎の体を見ても怪我をしている様子はない。服すら破けていないようだ。

 それでも倒れた時に背中を打ちつけたはず。床に押し付けられてもいたんだ。

 けれど、神崎は痛みに顔をしかめながらも起き上がったかと思えば、俺の前に庇うように立ってラージの方を見た。


「どうやら……言葉は通じるようですね。」


 こいつ……襲われたばかりで怖いはずなのに……。

 俺は目の前で僅かに震えている腕を掴んで引っ張った。


「お前もう戻れ。」
「ですが……。」
「いいからっ!」


 

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