[3]
「分かった」
私は本当にズルい。リョータが折れるのを期待してたし、泊めてくれると思ってた。こんな風に泣ける自分を心底浅ましいと思う。
「リョータ、無理言ってごめん」
「もういいって。女に泣かれちゃ男は断れないもんだからさ」
「ん…ありがと…」
「それよりお前風呂どーする?」
「あ…どうしよ。着替え…」
「着替えは別に俺の貸すけどさ。適当に」
「ん、じゃあ入りたい」
「おう。じゃあ先入れば?」
「いいの?」
「いいよ。俺飯食うし」
「じゃ入ってくるね」
「バスタオルとか適当に使っていいから。あと着替え…ちょい待って」
「ん」
なんか手慣れてるなぁ…ってのはこの際気にしないことにして、何だかんだで私はリョータの部屋でリョータと二人きりで一夜を過ごすことになった。
お風呂からあがってリョータに渡されたリョータのTシャツにトレーナーを着て…
鏡に映ったサイズの合わない不恰好な自分を見て、少しずつ心の奥が満たされていくのを感じた。
それからの私はバカみたいにぎこちなくて落ち着きを無くしてた。完全に二人きりである状況に飲まれていたのは私。リョータはただ、私のこぼす家庭内の愚痴に、相槌を打ったりアドバイスをくれたりした。けれど、話も尽きて愚痴も出しきった頃にはもう孤独感なんて無くなっていた。
寂しいなんて感情は、曖昧だな。所詮はこんなもんなんだ。
「女は分かんねぇ…」
リョータはそう言ってからベッドに横たわった。
「女って泣いたらすっきりするみたい」
そう言ってから私もリョータの隣にくっついて横になる。
「じゃあ俺がいなくても大丈夫なんじゃねぇの?」
「それとこれとは別の話」
「ほう…」
リョータの背中は熱い。
その小さくて大きな背中は
私の涙を含んで
孤独も吸いとってくれる。
今夜だけは、満ち足りた想いで眠れそうだと思った。
「おやすみリョータ」
「ん、おやすみ」
End.
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