[1]
似た者同士の私達なら
きっと上手くいくと思うんだ。
この肌寒い夜に
二人の孤独を寄せ合えばさ
少しは温かくなれると思ったの。
「夏樹さ…本気で今からウチ来る気…?」
「うん。だめ?」
「だめって…もう遅いしさ、親に怒られるよ?」
「……いいって、親も仕事終わるの遅いし。お父さんはどうせ帰って来ないし。」
コンビニでリョータと偶然会った。私が夜食のお弁当を物色してたら、リョータもいちご牛乳と菓子パン買ってて。いちご牛乳かよって突っ込んだところから、今の会話にまで発展した。
私は今から家に帰ったとしてもどうせ親はいないし一人なんだもん。ご飯だって一人で食べるより二人のほうがいいじゃない。リョータだって一人暮らししてんだから寂しいだろうにさ。なんか乗り気じゃないのが気にいらないわ。
家に来られちゃ困るもんでも隠してるってのか?
「そーゆーことか」
「ん、何が?」
「なんかヤバいもんでもあんでしょ」
「…、ねぇよ!!」
「じゃあいいじゃん別にさ」
「……いいけど…」
「じゃ、決まりっ」
言うが早く私はリョータの腕と自分の腕を絡ませて、夜風をきって走り出す。早く温まろう。外は寒いから。私の心も寒いんだから。
走って走ってリョータが途中で何かにつっかえても走ったら、あっという間に着いてしまった。
「お前なんで走るわけ…」
「わかんない」
わかんないけど嬉しくて楽しくて、変な高ぶりが私を突き動かしてる。
「弁当ごちゃごちゃんなってるぞ、たぶん」
「あ、ヤバ」
可笑しくて仕方がない。
「お前すぐ帰んだろ?」
「ん?うん…たぶん」
「たぶんて何だよ」
リョータは苦笑。それから部屋の鍵を取り出して、私はそれを見てるだけ。
「んじゃ散らかってるけど…どーぞ」
「おじゃましまーす」
うわぁホントに散らかってるよ。玄関先には隅の方に山積みになった古い雑誌に、脱ぎ散らかされた靴。靴、靴の山。
「なんでこんな靴ばっかあんの」
「コレクターだから、俺」
リョータの趣味って変わってる。でもコレクターって言うだけあってどれもお洒落で奇抜なデザインだ。
この蛍光ドピンクのスニーカーなんてどんな店に行けば置いてあるわけ。
「適当にそのへん座って」
「はーい…」
部屋に入るとまず視界に入ったのが黒のベッドだった。それから黒のカーテンに、本来の活用目的を完全に見失っていそうな雑誌が山積みのデスク。その雑誌が何かは見なくても分かる。
ベッドの脇には、バスケットボールが転がってる。
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