散雪華〜貴方と共に〜 薬と決意 なぜここまで厳しい決まりで締め付けるのか、今までは彼らの生い立ち、新選組の隊士たち個々の生い立ちが武士ではないからと伝わっていたし私もそうだと思っていた。 ある日の夜、何故かいつものように寝付けず、布団の上でごろごろしていた。 と、なんだが外が騒がしい気がした。 (何だろう…) そっと外に出る。と、向こうから幹部の皆が走ってきた。 「何かあったの?」 「え!? い、いや、なんでもねえよ! 何でもねえからお前は寝てろって!」 ほんと、平助は嘘が付けない。 走って行こうとする平助を私は逃がさなかった。 「何があったの?」 目をしっかり見て聞けば、あとはもうたじろぐだけ。 だけどそこに沖田さんが来てしまい私の質問は中断されてしまった。 「…平助?なにやってるの?」 「うお!総司! 助かったあ…」 「一葉ちゃん、あんまり… バタン! 沖田さんの話しを遮り、廊下の先からものすごい音がした。 「行くよ!平助!」 「ああ!」 二人が剣を構えて走って行く。 残された私の心の中には何だか嫌な予感だけが残っていた。 (この前の単語と何か関係が…?) ふと、以前に私に聞かせないように話していた単語が頭を掠めた。 私はさっと妖狐としての力で屋根に飛び乗った。 「な、なぜ…!?」 普通、人間は屋根になんて飛び乗ったりしない。なのに、私の目の前には私以外にもう一人の姿がある。 いや、あれは本当に人間…? 目が赤く、歩くと言うより獣のように這っている。 「一葉! そこから降りろ!」 不意に下から原田さんの声が響いた。と、目の前のモノがひらりと飛んだのは同時だった。 「ちっ…」 その後は私の思考が追いつく前に事が済んでいた。 原田さんの後から走って来た他の幹部に囲まれて、その“モノ”は絶命した。 「とうとう見ちまったか…」 私が余りの出来事に反応出来ないでいると、土方さんの苦虫を潰したような声がした。 部屋に戻ってから私は土方さんに詰問して、その“モノ”の事を聞き出した。 人ではないアレは、幕府から極秘依頼された薬の実験から生まれ、新見さんと山南さんが管理をしていたと言う。まだ研究は途中段階で、今日脱走してしまったモノのように理性がなくなり、そして強靭な肉体のせいで心臓を一突きにしないと死ぬ事も出来ない。 そんな危険な研究は今すぐやめて欲しい。この薬を投与された人間に接して見て、改良のしようがない、強力すぎると感じた。そう土方さんに伝えたが、幕府からの命だからやめることは出来ないと言われてしまった。 だけど、上手くは言えないがあの人間に投与された薬は強すぎて改良などというレベルではないと思う。 でもこれで分かった。 私の来たこの世界は本当の史実の江戸時代じゃない。 あんな人間を狂わせるような薬は現実ではあり得なさすぎる。 「ここが二次元の世界なら、私がどうこの世界を変えてしまっても文句はないわよね?」 思えばこの時に絶対に今後無駄な血は流さないと決めたんだ。 史実のような死に方はさせない。 私が変えてみせるって…… [*前頁][次頁#] [戻る] |