散雪華〜貴方と共に〜
新入隊士
ここ数日、こんなにも穏やかでいいのか!?と問いたくなるほど穏やかな日が続いていた。
「芹沢がいねえとこんなにも静かなんだな。」
「ああ。だけど、あの人を大坂に行かせて本当に大丈夫だったのかよ?」
「近藤さんも総司もいるんだ。大きなことは起こさせねえだろ。」
芹沢派と近藤さん、沖田さん、斎藤さんは大坂の市中警護と新選組の名を語って狼藉を働いているという不逞浪士を探しに大坂へと下っていた。
けど、私は知っている。
この警護の最中、芹沢さんが大坂力士と言い争いの後斬り合いとなり、それに沖田さんも加勢したということを…
「あの、土方さん」
「ん?何だ?」
「この警護のの最中に何があるのかとか私に聞かないんですか?」
「ああ。俺たちの問題はてめえで何とかするつもりだ。 それでも先が知りたい状態になるくらい追い詰められた時にお前の知識を借りる。そう、最初に決めたからな。」
そうなのだ。土方さんは私が未来から来て、妖狐としての人間離れした記憶能力があると知った時、その力は最終手段として使う。普段は普通にしてろ。と言ったのだ。
「そうですか。では、私は何も言いません。」
「それより原田、山南さん。隊士の募集はどうなってる? 芹沢がいないこの時に少しでも近藤派の隊士を増やしておきたいからな。」
「まだ全然集まっていないのが現状です。 京の主な道場には書状を送ったのですが、なにせ我々はまだ駆け出しの身。知名度が余りに低いのでしょう。」
「はあ…。そうか。まあ、仕方ねえと言えばそれまでか」
「まあ、そう気落ちするなって。土方さん。 剣の方はダメダメだったけど勘定が出来るってんで勘定方に入ったやつが一人いるじゃねえか。」
「土方さん!入隊希望者来たよ!」
ちょうどいいタイミングで平助がだだだっと走り込んで来た。
「お、まってました! 剣術ができるやつなんだろうな?」
「ああ。二人いるんだけど、どっちもそこそこ出来るって言ってたぜ。」
「そうか。じゃあ、早速腕を見るか」
「土方さん。その腕試し、私が相手をしても構いませんか?」
「お前が? だが…」
「人間相手なら私が本気を出して倒されることはありませんよ。 …あ、沖田さんの時は人間として戦ったから負けましたけど…」
「いいんじゃねえの? 副長助勤の小姓って事にしとけば、相手も納得するだろ。」
「はあ。分かった分かった。だが、目的は相手の腕を見る事だからな?」
「分かっていますよ。よーし!じゃあ久しぶりに思いっきり楽しむとしますかね!」
道場には二人の男性が座っていた。
私は副長助勤の小姓として彼らと立ち会った。
「二人目の大柄の方。あの人の剣には重みがありました。あと相手をよく見れてます。 逆に最初の方は身のこなしが軽かったですね。何か、う〜ん。忍者のような。」
立ち会った後はしっかり講評を述べる。
これはお祖父様が私にしてくれていた事だから、私もすっと口にする事ができた。
「ああ。しっかし本当にお前は剣が触れるんだな。」
「原田さん。女子だって身を守るためには剣を握るんですよ。」
もう道場を離れているから、こんな会話をしてても平気。
と、二人で楽しくお話ししてる所に、土方さんの呼び出しがかかった。
「あの二人は合格だ。 今から自己紹介も兼ねて配属を言い渡す。 広間に集まってくれ。」
それから、と土方さんは私に向かってこう言った。
「あの二人には今後新選組の裏となって活動してもらう。 心が許せそうな相手だと思ったらでいいが、お前の身の上、話してもいいぞ。」
これには驚いた部分もあったけど、色々お話しを伺ってからにしますと言って、返事は濁した。
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