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【Act.2】

初めて会ったのは幼稚園年長の頃。
隣りの家に引っ越して来たアイツを見て
『スッゲェ可愛い』
一目惚れした。

白くて華奢な身体。
紅いルビーの様な瞳と唇。
綿アメの様なフワフワの銀髪。
全てが俺を惹き付けて止まなかった。


「十四郎。コチラお隣りに引っ越して来た銀時くん。仲良くしてあげてね?」
母に言われ
『はぁ!?男かよ?』
激しいショックを受けた。

『何だよ。男のクセに女みたいな顔してんじゃねぇ』

「俺坂田銀時。宜しく」
笑顔で差し延べられた手。
パシリ払うと
「お前嫌い」
言い放った。

「え?」
泣きそうな顔をされ、チクリ罪悪感で胸が痛んだが
『知るかよ』
敢えて気付かない振りをした。

それからというもの
「おはよ。トシ」
笑顔で言われても、プイッ、無視をした。

最初は戸惑いながらも、必死に俺の顔色を伺っていた銀時だったが
「分かったよ。もう良い」
諦めたのか、一切近寄らなくなった。

ウザイのが居なくなってスッキリした筈なのに、逆に少し物足りなさを感じた。

って、何でだよ?
多分気の迷いだ。
気にすんな。




こうして月日は流れた。


「土方くん」
『又かよ』
ウザイなぁと思いながらも声の方に向かう。
「好きです」
毎日毎日告白されると、感覚が麻痺してくる。
「ありがとな」
笑顔で交わし、その場を去った。

ったく、何で俺なんだよ?
さっきの子なんて顔すら知らねぇぞ?
マジで面倒臭い。

毎日毎日同じ事の繰り返し。
ったく、つまんねぇな。
溜め息混じりに外を見ると、雨が降り出した。

ん?何アイツ真っ青な顔してんだ?

チラリ視界に入った銀髪。
顔が白いからスグ顔色で表情が分かる。

傘でも忘れたのか?
って、マサカな。
今日朝天気予報で、午後から大荒れになる言ってたぞ?
って、何アイツの事考えてんだ?俺。
取り敢えず授業に戻るか。

黒板に目線を向けた。


放課後、帰ろうと傘に手を掛けた瞬間
『ん?』
目の前に銀色が見えた。

何だアイツ、空なんか見詰めて。
何してんだ?

強風と大雨で荒れた空。

そんなの見てもつまんねぇだろうに。
何ずっと見上げてんだ?

ハァァ―ッ、聞こえた溜め息。
手元を見ると鞄しか持っていなかった。

バカだな。やっぱり傘忘れたんだ。

「入れよ」
自然に口から出た。

「土方?」
驚いた顔。
無理もない。
話しかけるなんて久し振りだ。

「どうせ隣りなんだ。入ってけよ」
「良いのか?」
恐る恐るって感じで尋ねる銀時。
何でそんなに遠慮する?

「帰れねぇんだろ?」
グィッ!!無理矢理引き寄せると
「帰るぞ」
自分の傘に入れた。

そういえば何年ぶりだろう?
コイツを近くに感じたのは。

なんかスッゲェ甘い香りがする。
女みたいだな、コイツ。

『ん?』
ふと視線を感じ、思わず見詰め返した。
パッ、慌てて逸らされる視線。
ほんのり赤くなっている顔。

どうした?銀時。
お前変だぞ?



翌日、移動教室の為銀時の前を歩いていた。
階段を昇る。

ああ、昨日の雨のせいで滑りそうだ。

少し湿った床。

気を付けて歩かねぇとコレ危ないかもな?

考えながら歩いていると
「先行く」
『え?』
俺を追い越そうとした銀時が急いだ。
が、ツルゥ―ッ、足を滑らせた。

オイオイ。危ないって、思った矢先コレかよ?

「坂田っ!!!!」
ガタタタタ〜ッ!!!!!!
無意識だった。

銀時を抱き抱え、階段から落ちた俺。

一生の不覚。

雨のせいとは言え、情けねぇな俺。

そう自嘲した瞬間、脳内に流れたセリフ。

「ねぇどうして銀時くんに冷たくするの?」
ああ、コレは中学の頃の母の声だ。

「嫌いだから」
「何で?スッゴク綺麗で可愛いじゃない?それにとっても良い子よ?」
不思議そうに尋ねる母。

だからだよ。
だから嫌いなんだ。

他のどんな女の子よりも可愛くて綺麗に見えるから。
お菓子みたいなスッゴク甘くて良い香りがするから。
アイツの全てが俺を惑わすから。

だから

だから嫌いなんだ。


小学校の頃は全くと言っても過言じゃない位モテなかった銀時。
なのに、中学になってから周囲の目が変わった。

《アイツ可愛くね?》
アイツとは銀時の事だ。

ほんの少しだが、小学校の頃より伸びた身長。
可愛らしく成長した顔が、人気の原因だった。

でもアイツの側で、楽しそうに笑う人間の姿なんて見たくねぇ。

気が付くと、銀時に好意を持っている男に対して
『ソイツに触んじゃねぇ』
敵意を持ち始めていた。

「アイツ好きな奴居るぜ?」
勿論そんなの口から出た出任せ。

だけど、皆信じて諦めた。
それでも諦めない奴は
「しつこい男は嫌われるぜ?」
脅しを入れて諦めさせた。


そして好意を抱く女には、ワザと手を出した。
誰だって言い寄られたら嬉しいに決まってる。
優しい演技をしたらコロッと騙され、簡単に心変わりした。

そんな簡単な気持ちなら、最初っから好きになるなよ。
2度とアイツに近付くな!!!
心底恨めしく感じた。




ああ、スッゲェ頭が痛い。
俺死ぬのか?

「土方っ!!」
アイツの声がする。

泣いてんのか?

何でだ?

分かんねぇよ

銀時。




こうして、俺は完全に意識を失った。

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