V-T
【Act.3】
パチリ目が覚めると
『ん?』
激しい違和感を感じた。
何だ、この違和感は?
えぇ〜っと、寝過ぎか?
寝過ぎると頭がぼぉ〜っとするもんな。
ハッキリしない脳のまま
「おはよう」
母に挨拶をした。
いつもと変わらぬ朝。
なのに拭いきれない違和感は一体何なんだろうか。
「おはよう十四郎。コレ現像したから食後見て」
椅子に座った途端渡されたアルバム。
何の写真だろう?
急いで朝食を食べると、部屋に戻った。
凄く気になる中身。
「え?」
中を見て、凍り付いた。
何だコレ?
ソコには、銀時が居た。
どの写真にも写っている。
どうしてだ?
多分服装・食事・雰囲気からして、クリスマスと正月のだ。
どういう事だ?
今は一体何月何日なんだ?
「母さん今日何月?」
慌てて聞くと
「何言ってんの?2/14じゃない」
変な顔をされた。
『はぁああぁあ!?』
記憶がゴッソリ抜け落ちている。
俺は記憶喪失だったのか?
だけど何故?
何故銀時が側に居たんだ?
分からない。
再び写真を見詰めるが、消えてしまったらしい記憶は戻らなかった。
写真には、楽しそうに笑う俺と銀時。
何故だ?
俺達はこんな関係じゃなかった筈だ。
一体記憶のない間何があった?
何気なく開けた机の引き出し。
え?
中にあったのは、数枚の写真。
何だコレ?
物凄く親しげに触れ合う2人。
おかしい。
何かがおかしい。
腑に落ちない疑問を抱えたまま、俺は登校した。
「トシぃ〜」
駆け寄って来る銀時。
はぁ!?何名前で呼んでんだよ?
「コレ甘さ控え目にしたから」
はにかむ笑顔。
赤く染まる頬。
ヤバいな。スッゲェ可愛い。
何でだろう?
初めて会った時から、この顔にしか反応しない。
マジムカつく。
コイツのせいで、俺の人生台無しだ。
何でこんなに可愛いんだよ?
つか、どうして可愛く見えるんだ?同じ男なのに。
あ〜もう、俺が1番ムカつく。
手渡されるチョコ。
そういえば今日バレンタインだったな。
つか、何でお前が俺に渡すんだよ?
新手の嫌がらせか?
パンッ!!
軽く手を弾いた。
と同時に落ちるチョコ。
パリンッ、地面にぶつかり聞こえた嫌な音。
「トシ?」
何でそんな顔する?
スッゲェ哀しそうだ。
分かんねぇよ銀時。
「要らない」
そう言うと俺は、銀時の前から姿を消した。
その後の授業中、ずっと視線を感じた。
縋る様な、それでいて、泣きそうな視線。
何でそんな目で見るんだよ?銀時。
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