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『隣』
3-2
奏にとっては待ちに待った、俺にとっては来て欲しくなかった入学式。
真新しい制服に袖を通して3人で登校した。

嬉しそうに頬を染めて体育館に入っていく奏に胸が締め付けられる。
校長や来賓の話で軽い睡魔に襲われながらも目を開けて前を向く。
新入生代表が始まった瞬間
「…………あの人だ…」
奏が呟いた。
ん?
誰?

壇上に上がったのはムカつく位整った顔の男前な美形。
女子がキャアキャア黄色い声を上げている。
新入生代表イコール受験で一番良い成績を出したって事なんだよな?
あの顔で頭脳明晰とか狡くね?
って、まぁ、それ言ったら阿波路だってそうなんだが。
阿波路の場合は残念過ぎる美形だし、イツメンだから良いんだけどさぁ、やっぱ他の奴だと同じ男として羨ましい。

うっわ、マジかよ。
一言声を発した瞬間余計色めきだった体育館。
女子達が皆アイドルか何かを見るみたいに骨抜き状態になっている。
天は二物を与え過ぎだろアイツに。
スッゲェイケボ。
声優になれんじゃね?

さっき迄騒いでいた連中は一言一言を聞き逃すまいと必死に静かに聞きいっている。
何コレ?
何かの朗読会?

「アンコール、アンコール」
一礼をし壇上を降りた瞬間鳴り響いた声援。
だから、何だよ、コレ。
呆れ果てて
「スッゲェな」
同意を求める為奏を見たら
「奏?」
奏が涙を流していた。

……………………えっと、マジで何なの?この状態。
理解不能。


不可思議な入学式が終わり、各自自分達のクラスに向かう。
幸運な事に俺達は3人共同じクラスだった。
席替え迄は好きな席で良いと黒板に書いてあった為、俺達は一番後ろの席を陣取った。
校庭側の窓際一番後ろが俺。その隣が奏。で、その隣が阿波路だ。

殆どの奴が各々好きな席に座り終えた時、教室が軽くざわついた。
なんだ?
目線を移すと新入生代表のイケメンで。
なんだよ、同クラか。そう思った。

殆ど埋まった席。
奴は何故か俺の前の席に座った。
うん、まぁ、残ってる中で一番良い席はソコだろうけど、うん。
なんか、嫌だ。
比べられるのも嫌になる位の出木杉君が近くにいるなんて、最悪でしかない。
心の中で盛大な溜め息を吐いた。


入学式の日はあっという間に学校が終わる。
明日は学校案内やらあった後、もう授業が始まる。
体験入学&学校説明会の日渡された大量の宿題も提出しなきゃならないし、憂鬱。
荷物が多くなりそうだ。

って、ん?
ちょっ、え?奏?

なんかスッゴイ有り得ない位奏がボォーってしてるんだけど大丈夫か?コレ。

「奏?」
何処見てるのか分からない表情で下校してる。
危なくないか?コレ。
「わっ」
思った通り階段でふらついた。
「ごめん、琉翔」
「いや、気を付けろよ?」
「うん。ありがと」
その後は辛うじて普通に帰宅したが、なんかスッゲェ心配。

早速出された自学に嫌々ながらも取り組んでいたら
「ん?」
奏からメールが来た。
手を休めスマホを手に取る。

件名 : どうしよう
本文 : 居た

って、何だ?コレ。
全く意味が分からない。

とりま俺は奏に電話を掛けた。

「何が居たんだ?」
「あのね、同じ学年で同じクラスだったんだ」
ん?
えっと、まだ分からないんですが。
「この前一目惚れした人新入生代表の人だったんだ」
は?
うう〜んっと、奏さん。
何言ってるのかサッパリ分かりません。
新入生代表ってアイツだろ?
容姿端麗で頭脳明晰なイケボ。
でもアイツって、男だよな?
名前も見た目も男だったし、女じゃないよな?

「この前言ったでしょ?好きになったの女の子じゃないって」
うん、まぁ聞いたけどさぁ。
だから、えっと、どういう事?

「神凪帝(かんなぎ みかど)なんだ。俺の好きな人」
「……………………………………………………………………………………」


人間って、本当に驚くとフリーズするよな?

「琉翔?」
「えっと、マジで?」
聞き間違いだよな?
頼む、そうだと言ってくれ。
「ううん、本当」

嗚呼、俺、終わった。


可愛い女の子や、綺麗なお姉さんなら負けを認められた。
でも男はないだろう。
尚且つあんな勝ち目のない奴なんて。
俺戦う前から失恋決定じゃん?

って、いや、普通男は女を好きになるものだ。
男子校ならまだしも此処は共学だし、可愛い女の子は沢山居る。
神凪が奏を好きになる事はない。
大丈夫だ、只の憧れで終わるに違いない。
だから大丈夫。
奏が奪われる事なんてない。

「そっか。良かったな」
適当に返事をした。


翌日、重たい荷物片手に奏と阿波路と合流し、登校した。
教室に着くなり、目に入るは忌まわしき神凪。
その美貌とイケボで女子だけでなく奏の心迄奪うとは、まさに男の、いや、俺の天敵。

奏を見るとうっとりと神凪を見ていた。
マジムカつく。
イケメン爆ぜろ。

「あ、あの、神凪君おはよう」
「おはよう」
うっわ、ちょっ、マジかよ。
スッゲェ爽やか。
今笑顔キラキラ輝いていたぞ?
女子共の目が蕩けてるよ、マジで。

「おはよう神凪君」
「おはよう」

「おはよう」

何だ、コレ?
挨拶の嵐なんだが。
その都度キラキラを振り撒くのだから、周囲は女子だらけ。
正直俺席に近付きたくありません。
奏迄うっとりしてるし、俺これからスッゲェメンタル持ちそうにないわぁ、マジで。

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