ストック
5
そのとき僕はまだ友達とかもほとんどいなくって、ひとりで寮の中を歩いてたの。
そしたら、顔も見たことない先輩に話しかけられて。
「名前なんていうの?」とか、
「可愛いね、友達になろうよ」とか、
しつこく言われて僕、どうしたらいいのかわからなくって。
「あの、僕、用が…」
「あ、そうなの?ごめんごめん、じゃあ時間ないならアドレス教えてよ?」
「え、と…そういうのは…」
「…なんでだよ?別にアドレスくらい いいだろ。」
断ろうとした僕に、その先輩はガラリと雰囲気を変えて恐い顔で睨んできた。
「は、はぃ…」
恐くて恐くて、僕は仕方なくポケットから携帯を出そうとした。
そこに、
「はいはいストップストップー!」
慶くんが割り込むように入ってきたのだ。
「…村崎。」
「俺のクラスメイトいじめるのやめてくれませーん?」
「別にいじめてなんかねえよ、友達になろうとしただけだろ?」
「俺にはそうは見えませんでしたけど?」
「…チッ、めんどくせえな」
先輩は舌うちして、クルリと向きを変えて去っていってしまった。
「…大丈夫か?」
「えっ、あ、うん、へ、へいき、です!」
「ははっ、どもりすぎ!」
「ご、ごめん、なさい」
「いや、別に謝らなくてもいいって。
ていうかなんで敬語?タメだろ?」
「…う、ん。そうです、…だよね。」
「ははははっ、皆川っておもしろいのな!」
え、
「僕の名前…」
「名前?皆川潤、だろ?違った?」
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