夢の刀




ヒュ―――――





――氷雪世界

風が凄い勢いで吹き上がる。





ガシャンッ





そして、上から何かが落下してきて地面に付き刺さった。

すると風はゆっくりと止む。





―――――忘れたくなどない!――





途端、少女の心の声が響く。





――頼む・・・誰か・・・―――――助けてッ!――





そして強い願いに似た少女の悲痛なる心の声が響いた。





ビュオ―――――





一瞬、風が強く吹き込む。

その先から見えたのは一振りの美しい純白の刀だった。




















夢の刀




















バッ




勢いよく飛び起きる。



「・・・何だったんだ・・・今の夢は・・・・・」



冷や汗を流しながら日番谷は小さく呟いた。















――十番隊隊舎



「おはようございます隊長!」



朝から騒がしく乱菊は挨拶をする。

それに日番谷は軽く「おはよう。」と挨拶をし直ぐに自分の席へと座った。

そして溜息を付く。



「・・・どうしたんですか隊長?朝から溜息を付くなんて。」


乱菊は疑問に問う。



「別に。少し変な夢を見てな。」

「変な夢ですか?」

「あぁ。氷雪世界の夢なんだ。」



日番谷の言葉に乱菊はハッとなる。



「氷雪世界って氷雪系の斬魄刀が時に繋がると言われる精神界ですよね?」

「そうだ。ただ氷雪世界に来れるのは上位の死神だけなんだけどな。」



日番谷の説明に乱菊は「知らなかったぁー」と呟く。



「どんな夢だったんですか?」



乱菊は興味深々に聞く。

日番谷は、一瞬、黙り込むが口を開いた。



「誰もいない沈黙の世界で一振りの純白の刀が刺さっているんだ。」

「刀?」

「あぁ。そして誰かが叫ぶんだ・・・」



日番谷はふと窓に視線を向け口を開いた。





―――忘れたくない・・・―――――助けてと・・・・・」





少女の声を頭に響かせながら日番谷は静かに呟く。




カンカンカンカン!!!




「「!?」」



途端、荒々しく警報の音が響いた。

二人は目を見開く。



『緊急警報!緊急警報!瀞霊廷内に侵入者あり!!!』



侵入者≠ニ言う声に二人は反応する。



「侵入者と言うことは・・・」

「旅禍だな。」



二人は表情をしかめる。




―――ヒラ




瞬間、小さな霊圧が感じ二人は視線を向ける。

視線の先には地獄蝶が慌ただしく舞っていた。

地獄蝶はふと止まる。



『諸君よ。瀞霊廷内に旅禍が侵入した。各隊、守備配置に付き旅禍を見つけ次第、捕獲。抵抗するようであれば処刑せよ。』



地獄蝶から山本が真剣に告げる。

二人は「「はい!」」と勢いよく返事をし行動を開始した。















――数時間後



「隊長!」



守備配置に付いている日番谷と十番隊員達の元に少し用を足していた乱菊が慌てて駆け込んで来る。



「どうかしたのか松本?」



日番谷は疑問に問う。

乱菊は、一瞬、黙り込み口を開いた。



「修兵が・・・やられました。」



日番谷はうっすらと目を見開く。



「・・・そうか。」



そして呟いた。



「・・・余り驚かないのですね。」



乱菊は疑問に呟く。



「もう驚いてなんかいられないだろ。阿散井だってやられてるし狛村だって逃げられているんだからな。」



旅禍が侵入してから数時間。

初めに旅禍と遭遇した阿散井は戦闘に負け四番隊。

その次に旅禍と遭遇した狛村は斬魄刀を解放したものの旅禍に逃げられたと言うことだった。



「旅禍は隊長各から逃げ切り副隊長各の二人をやった。つまり今までの旅禍とは比べ者にならねえってことだ。」



日番谷は複雑に呟く。



「お前等、気を絶対に抜くなよ。」



真剣に日番谷は乱菊と隊員達に告げる。

それに乱菊と隊員達は勢いよく返事をした。




―――ズッ




「!?」



一瞬だが感じたことが無い霊圧を感じる。

日番谷は目を見開くと霊圧が感じられた方向に勢いよく向く。



「隊長?」



そんな日番谷の行動を見て乱菊は名を呟く。

日番谷は黙り込むがゆっくりと口を開いた。



「少し出る。お前等は此処で待っていろ。」

「え?って何処行くんですか隊長!?」



日番谷はそう告げた後、乱菊の停止の声も聞かずに勢いよく駆け出す。



「もう!」



そんな日番谷の行動に困った乱菊はムッとしながら仕方なく日番谷を見送ったのだった。















スタッ




駆け巡っていた屋根から鮮やかに着地する日番谷。



「・・・来る。」



そして、そう呟くと顔をあげ目の前の道を見つめた。




ザッ




途端、左側の道からある人物が飛び出してくる。



「!!?」



日番谷の瞳に映ったのは驚きで目を見開く黒崎一護だった。



(オレンジ色の髪に身の丈ほどの巨大な斬魄刀・・・やはりこいつが例の旅禍だな。)



日番谷はすぐ旅禍だと判断する。

瞬間、一護の表情は驚きから変わり笑顔となった。



「冬獅郎!」



そして、自分の名前を叫ぶ。



(何故こいつ・・・俺の名前を・・・?)



日番谷は顔をしかめる。

そんな日番谷に一護は近付く。



「聞いてくれ冬獅郎。俺は「動くな。」



ピタリと止まった一護の表情は強張る。

強張ったのは日番谷が自分に氷輪丸を向けたからだった。



「冬獅郎・・・?」

「気安く俺の名を呼ぶな。」

「呼ぶなって・・・急にどうしちまったんだよ!まるで他人のような・・・まさか・・・?」



一護は、一瞬、黙り込み口を開いた。



「お前まで俺のことを覚えてないのか・・・?」



一護の言葉に日番谷は表情をしかめる。

そして呟いた。



「覚えてるも何も知らねえよ。お前のことなんか。」



自分を見る何時もの優しい眼差しとは違う冷ややかで冷たい眼差し。

それは敵を見る瞳。

一護は薄っすらと眼を見開き悲しい表情をする。



「そうか・・・お前も忘れちまったんだな・・・」



そして、悲しく呟いた。

一護の言葉に日番谷は僅かな怒りを覚える。



「その言い方はやめろ。忘れたと言うことはあるはずがない。俺は元からお前のことを知らないんだからな。」



冷ややかに告げる日番谷。



「いや・・・お前は俺のことを知ってるはずだ・・・ただ・・・お前も忘れちまったんだよ・・・俺のことをな・・・・・」



悲しそうに微笑む一護。

そんな一護の瞳は嘘をついてるようには見えなかった。

瞳を見た日番谷はよく分からない苛立ちを覚える。



「とにかく、てめえは旅禍だ。瀞霊廷の敵として十番隊隊長日番谷冬獅郎はこれよりてめえを排除する。」



真剣な表情を向けながら日番谷は凛と告げた。

一護は眼を見開く。



「待ってくれ!俺は、お前と戦う気は無い!」



一護は叫ぶ。

日番谷は、一瞬、動きを止めるが駆け出し勢いよく氷輪丸を振り落とした。




ガンッ!




刀がぶつかり合う音が響く。

一護は斬月で氷輪丸を弾くが日番谷は再び振り落とす。



「やめろ冬獅郎!俺はお前とは戦いたくねぇ!」

「黙れ!敵を排除する・・・それが俺の役目だ!」



日番谷の言葉に一護は叫ぶ。



「ちがう!俺は敵じゃない!俺は死神代行、黒崎一護だ!」





――黒崎一護・・・・・?――





その名に日番谷は反応する。

何かが日番谷の感情を揺らす。



「嘘だ!死神代行はこの数百年間、受け持った奴は誰一人として存在しないし黒崎一護なんて俺は知らない!」



揺れる感情を押し込めるかのように日番谷も叫ぶ。



「ならルキアのことは覚えていないか!?十三番隊朽木ルキア!白哉の妹だ!」



朽木ルキア≠ニ言う名を聞いて日番谷は一護の名を聞いた時と同じ感情に狩られる。



「知らない・・・十三番隊にはそんな奴いないし朽木隊長には妹なんかいない!」

「!?」



知らないと叫ぶ日番谷に一護は眼を見開く。

そして静かに口を開いた。



「お前まで・・・お前までルキアを忘れちまったのかよ!」



一護は叫ぶ。





「皆、忘れている・・・俺のことも・・・ルキアのことも・・・何で・・・俺達は仲間だったじゃねえか!!!」





仲間≠ニ言う言葉に日番谷は大きく反応する。





――仲間・・・・・?――





日番谷の頭の中には二人の人物が映る。

微笑む一護と記憶にない少女。



(何でッ・・・?)



日番谷の力が弱まる。

そんな日番谷の様子に一護は賭けに出るかのように叫んだ。



「俺はルキアを助けなきゃなれねぇ・・・だから頼む!思い出してくれ冬獅郎!!!」



願いを込めるかのように叫ぶ一護に日番谷の心は揺れる。





――やめてくれ・・・俺は・・・――





日番谷は無理に心を押し込める。




ガンッ!!!





――てめえなんて知らないんだ・・・!――




そして凄い力で氷輪丸を振り落とした。



「!!?」



一護の瞳は大きく見開かれる。





「冬獅郎!!!」





悲痛に叫ぶ一護。

そんな一護の表情は絶望とただ悲しみに包まれていた。

それを見た日番谷の表情はふと悲痛に歪む。



「それ以上・・・俺の名を呼ぶな!!!」



一護を拒絶するかのように日番谷は叫ぶ。

そして斬月を弾き氷輪丸を振り落とした。

氷輪丸は一護の腕を斬り付け一護の腕からは血が流れる。

一護は痛さで表情をしかめた。

それを見て日番谷は呟く。



「戦え旅禍。じゃなきゃ・・・死ぬぞ。」



冷たい声が響く。

一護は再び悲しい表情をし黙り込むがゆっくりと口を開いた。



「そうだな・・・お前は強いから戦わなければ俺は殺られちまうだろ・・・だけど、俺はお前とは戦わねぇ。絶対だ。」



真っ直ぐな瞳で告げる真っ直ぐな言葉。

日番谷の瞳はゆっくりと見開く。





――何故・・・

何故、こいつは戦おうとしない・・・?



腕を斬られたのに・・・

敵なのに・・・





どうして・・・・・?――





日番谷は確かに疑問に思う。

そして、ある一つの思いが過ぎる。





――いや・・・

本当にこいつは・・・





―――――敵なのか?――





日番谷の中で激しく揺れる感情と瞳。

そして自分を初めて疑う。

氷輪丸は向けているものの身体は動かない。

ただしく言えば動けないのだ。

それは敵として戦おうとする日番谷の身体が拒絶しているから。

既に日番谷からは一護に向ける殺意は消えていたのだった。

―――その時





―――――忘れたくなどない!――





「!!?」



日番谷の頭に声が響く。

それは今日の夢で聞こえた声。



「あッ・・・!」



突然、頭に激しい痛みを感じ日番谷は頭を押さえ込む。



「冬獅郎・・・?」



そんな日番谷の様子を見て心配そうに一護は名を呟く。





――何で夢で聞こえた声が・・・!?――





日番谷は混乱する。





――頼む・・・誰か・・・―――――助けてッ!――





―――!!?」



―――絶望、恐怖。

それらが強く自分を追い込む。

その途端、頭にこれ以上とない激痛が日番谷を襲う。



「うッ・・・うわあああぁ―――――!!!」



日番谷は悲痛に叫び倒れ込んでゆく。

そんな自分の元に自分の名を叫びながら一護は慌てて駆け込んで来る。

遠退く意識の中、一護の姿を見た最後に日番谷の意識は暗闇に包まれたのだった。















ヒュ―――――




冷たい風が強く吹き込む。

辺り一面に広がるのは銀世界。


「此処は・・・?」



見覚えのある場所に日番谷は呟く。





―――久しぶりだな小僧。」





聞き覚えのある声に日番谷は慌てて後を振り向く。

振り向いた先には圧倒的な霊圧を放つ巨大な水と氷の龍・・・氷輪丸がその場に君臨していた。



「氷輪丸・・・?」



日番谷は驚きながら呟く。

そして問う。



「なんで俺は氷雪世界にいるんだ?確か俺は旅禍といたはず・・・?」

「そうだ。だが貴様はその最中に気絶し此処に来たのだ。ある斬魄刀に呼ばれてな。」

「斬魄刀?」



氷輪丸が向いている視線の方に日番谷も向く。

瞬間、眼を見開いた。



「純白の・・・斬魄刀・・・?」



日番谷の瞳に映ったのは夢で見た純白の斬魄刀だった。



「小僧、お主はあれを夢だと思っていたようだが全て現実。この斬魄刀が主を此処に呼び出していたのだ。」



氷輪丸の言葉に日番谷は驚く。



「斬魄刀が?だが何故、俺を・・・?」



日番谷は疑問に問う。

氷輪丸は日番谷から視線を背け先にある斬魄刀を見つめ告げた。



「斬魄刀に触れろ。そすれば分かる。お前が呼ばれた理由。そして、先程から感じている心の高ぶりがな。」

「!?」



先程から感じている心の高ぶり

氷輪丸の言葉に日番谷は大きく眼を見開く。

問おうとするが斬魄刀に向ける氷輪丸の真っ直ぐな瞳を見て日番谷は口を閉ざす。



「・・・」



日番谷はゆっくりと歩きだし斬魄刀の前に立つ。

そして、ゆっくりと触れた。




ビュオ―――――




「なっ!?」



途端、凄い突風が斬魄刀と日番谷を囲む。

驚く中、日番谷の意思は暗闇へと包まれた。















辺り一面に広がる暗闇・・・



『此処は・・・?』



日番谷は辺りを見渡す。




―――




『うっ!』



途端、自分を光が照らす。

余りの眩しさに日番谷は瞳を閉じる。

そして、ゆっくりと開いた。



『こいつは・・・?』



日番谷の瞳に映ったのは何かの映像。

映像には一護との戦闘中に、一瞬、見た少女の姿だった。

よく見ると少女の他に異様な威圧感を放つ女性と男性がいる。

そんな二人を見る少女の表情は強張っていた。

その内、女性は少女に近寄る。


『!!?』



瞬間、少女の意思に日番谷が重なった。















深く堕ちたような感覚。

そして何かが記憶と瞳に流れ込む。





『・・・あいつを・・・信じてやれ。』



――阿散井・・・?――



誰かを微笑みながら抱き上げて駆け出す阿散井恋次。





『・・・・・済まぬ。』



――朽木隊長・・・?――



誰かに手を握られながら心から謝罪をする朽木白哉。





『命を守るための戦いと誇りを・・・守るための戦いと・・・!』



――浮竹・・・?――



誰かへと悲しみに堪えるかのように悲痛な表情で告げる浮竹十四郎。





『ありがとな。』



――志波先輩・・・?――



誰かにもう死ぬと言うように穏やかな微笑みを浮かべる元先輩で亡くなってからも自分の憧れである志波海燕。





『同じ氷雪系同士・・・よろしくな。』



――俺・・・?――



誰かに小さく微笑む自分自信。





――誰なんだ・・・?



皆は一体・・・

誰と一緒にいるんだ・・・?



俺は一体・・・

誰と一緒にいたんだ・・・?――





日番谷は記憶を辿る。

だが辿り付けない。

まるで何かにそれを拒まれているかのように・・・





『俺は黒崎一護だ。』



――こいつは・・・あの旅禍・・・?――



自分の名前を叫びながら戦いを拒み続けた旅禍の黒崎一護。





――何故・・・

何故、死神の中の記憶に

旅禍である黒崎一護が出てくる・・・?――





日番谷は疑問に思う。

その時、ふと浮かぶ。

浮かぶのは旧友であった草冠惣次郎が起こした王印強奪事件。





――俺のことを・・・

必死に救おうとしてくれたのは・・・

誰だった・・・・・?――





孤独な戦い・・・

そんな中、一人の者だけが処刑命令を下った自分を信じてくれた。

自分を救ってくれた者。

忘れるはずが無いと思っていた。





『冬獅郎!!!』





その時、悲痛に自分の名を叫ぶ一護の姿が浮かぶ。

そして自分を信じ救ってくれた者に、一瞬、重なった。





――どうして・・・

どうして黒崎一護が

頭から離れないんだ・・・!

あいつは旅禍で・・・

会ったことなんか一度もないはずなんだ・・・!――





日番谷は混乱する。

その時、最後の映像が流れ込んだ。





『朽木ルキア≠セ。』





日番谷の時間は、一瞬、止まる。





――朽木・・・ルキア・・・・・?――





朽木ルキア。

それは一護が捜し出すと言った死神の名前。

そして自分も忘れてしまったと言われた存在。





―――――忘れたくなどない!――





瞬間、思い出となっている記憶の再生は終わり他の映像が流れ込む。

映像に映るのはルキア。

そんなルキアの表情は恐怖に包まれている。

そしてルキアの恐怖が日番谷に伝わる。

それは何かを失う恐怖。





――頼む・・・誰か・・・―――――助けてッ!!!――





ルキアの悲しみに包まれた悲痛な叫びを最後に映像は終りを告げ日番谷は自分の意思へと戻った。
















―――――そうだったのか――





再び見る暗闇の中、日番谷は理解する。





――俺の心にあった高ぶり・・・それは・・・――





―――そうだ。』





声が聞こえた、瞬間、目の前が光りだす。

光の先には氷輪丸の姿があった。



『斬魄刀袖白雪≠ヘ氷雪系最強のお主に託したのだ。だから貴様は失ったものを理解することができた。』



氷輪丸は凛と告げる。





『お前は運命の懸け橋を握った。この先どうするかは・・・・・お主次第だ。』





―――――




氷輪丸が告げた後、途端だが光が強く輝きだす。

紅色の瞳を揺らす氷輪丸を最後に日番谷は瞳を閉じたのだった。















「隊長!?」



瞳に映る。



「・・・松本。」



映ったのは心配そうな笑顔を浮かべている乱菊だった。



「もう心配したんですからねぇ!」



乱菊は大きな声で言う。

そんな乱菊の表情は至って真剣だった。



「すっすまない。」



日番谷は戸惑いながら謝罪する。

そんな日番谷を見て乱菊は「ふん!」とそっぽを向く。

そして口を開いた。



「隊長を引き渡してきたの・・・旅禍なんですよ。」

「・・・え?」



乱菊の言葉に日番谷は声をあげる。


「わざわざ私の所まで隊長を引き渡しに来たんですよ。
こいつ急に頭を抱えながら叫びだして意識を失ったんだ!すぐ四番隊に連れて行ってやってくれ!≠チて慌てて来て・・・敵なのに変な奴ですよね。」



「なんだか悪い奴には見えなくて戦うことが出来ませんでした。」と言いながら乱菊は苦笑いをした。



「・・・」



日番谷はただ黙り込む。



「それでは隊長が目覚めたことを卯ノ花隊長に伝えて来ますね♪」

「あぁ。頼む。」



乱菊は笑顔でそう言うと四番隊をでていった。

残された日番谷はふと窓に視線を落とす。

瞳に映るのは慌ただしい隊員達。

これを見て一護が捕まっていないのを理解する。





『お前は運命の懸け橋を握った。この先どうするかは・・・・・お主次第だ。』





思い出されるのは氷輪丸の言葉。



「俺は・・・・・」



沈黙の部屋には日番谷の呟きだけが静かに響いた。















――そこまでじゃ旅禍。」



圧力をかける山本の声が響く。

山本の周りには隊長と副隊長達。



「くそっ・・・!」



その者達が囲う円城の中心には表情をしかめる一護の姿があった。



(此処までなのか・・・!俺はルキアを・・・!)



一護は悔しさで唇を噛み締めた。




ヒュ―――――




その時、冷たい風が吹きあげる。





―――――霜天に坐せ・・・氷輪丸。」





ビュオ―――――ゥ!!!




凛とした声が響いた途端、突風が死神達と一護を襲う。

そして突風の先から現れる水と氷で出来た巨大な龍・・・



(水と氷で出来た龍・・・まさか!)



瞬間、一護の瞳には銀髪に十≠ニ書かれた羽織りを着こなす一人の少年が映る。

その姿に一護は笑顔で叫んだ。





「冬獅郎っ!!!」





一護の瞳に映ったのは氷雪系最強の斬魄刀である氷輪丸を持つ日番谷だった。

日番谷は一護の方へ向くと、突然、一護の腕を掴む。



「此処は一旦、逃げるぞ。」



そう言うと日番谷と一護は一瞬で消えたのだった。















「取り合えず今は此処で大丈夫だ。」

「そうか・・・助けてくれてありがとな。」



瀞霊廷でも外れにある小さな小屋。

そこに日番谷と一護は滞在していた。



「俺を助けてくれたってことはもしかしてお前・・・記憶が・・・?」



一護は瞳を輝かす。

そんな一護を見て日番谷は、一瞬、黙り込むが口を開いた。



「残念だが記憶を取りもどした訳じゃねえんだ・・・」



残念そうに告げる日番谷に「だよな・・・」と一護も残念そうに呟いた。



「ん?じゃぁ何で俺を・・・?」



一護は疑問に呟く。

日番谷は真っ直ぐな瞳で一護を見つめながら口を開いた。



「斬魄刀が・・・袖白雪が教えてくれたんだ。お前のことも・・・朽木ルキアに何があったのかも。」



日番谷の言葉に一護は眼を見開く。

そして日番谷の肩を勢いよく掴んだ。



「やっぱりルキアの身に何かあったんだな!?頼む!教えてくれ!」



一護は必死で聞く。



「俺も詳しいことは知らねぇ。ただ朽木ルキアは何者かに記憶を消された。今までの記憶をな。」

「!!?」



表情を曇らせながら一護は眼を見開く。



「ルキアの記憶を・・・?何の為に・・・?」

「さあな。だがこれだけは言える。斬魄刀と持ち主の魂は繋がっている。袖白雪が俺に助けを求めたと言うことは朽木ルキアも助けを求めていると言うことだ。」



日番谷は静かに告げる。

一護は黙り込むが顔をあげ口を開いた。



「あいつが・・・ルキアが助けを求めてるって言うなら俺はルキアを絶対に助ける。ルキアは俺の世界を変えてくれたから。」



真剣で強い瞳を見て日番谷は口を開く。



「そうか・・・俺も手伝う。」

「・・・え?」



日番谷の言葉に一護は声をあげる。



「でも、記憶が戻っていないんじゃ・・・?」



戸惑いながら聞く一護に日番谷は答えた。



「あぁ。お前と朽木ルキアに関しての記憶は一切戻っていない。
だが袖白雪が見せてくれた朽木ルキアの記憶の中には俺もいたしお前もいた。それに記憶の中にいるお前を見て黒崎一護は信用できる=E・・そう思ったんだ。」



日番谷は凛と告げる。





「それに俺は取り戻したいんだ・・・―――――忘れてしまった記憶を。」





現実に屈しない強気な瞳。

一護は薄っすらと眼を見開きながら呟いた。



「そうか・・・なら一緒に取り戻そうぜ。冬獅郎と死神達が忘れちまった俺達の記憶。そしてルキアを。」

「当たり前だ。その為に仲間を敵に回し、お前の味方になったんだからな。」



互いに微笑む。

その微笑みには迷いが無い。



「行くぞ黒崎!」

「あぁ!」



二人は小屋から立ち去る。

進む道を同じくして・・・




















失った記憶と奪われた友情





ただ信じる

再び取り戻すことを・・・



そして歩きだす

少女を救おうと・・・








それぞれ人は加速する



消えることのない「絆」を胸に抱きながら・・・・・

























END








〇あとがき〇



劇場版BLEACH第三弾 Fade to Black〜君の名を呼ぶ を祝して書かせてもらいました★

劇場版みてないので話しがあやふやになっちゃいました…汗
この小説は「劇場版の日番谷はこんなふうに活躍してほしいなぁ〜」と思い筆執。
ルキアと接点あったのは氷雪系同士の繋がりってやつです!笑
いやぁ〜
劇場版みたいですねぇ〜
日番谷くんが以外と活躍するみたいなので♪
でも受験生だから行けないと言う現実…
DVD出るまで待つしかないようで非常に残念です…泣



こちらフリーとなっていますので良かったらお持ち帰りくださいVv





20.12.09



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