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かっちゃんが職員室に用があるっつーから寄りつつ、さっき見た野球部の夫婦とサッカー部のカップル、それについて熱く語りながら(オレが一方的に)、玄関を出る。

外はもう、薄暗い。
空は一部を残して深い青に染まりつつあって、そこにかすかに光る小さな星が、すごく神秘的だ。
さっきまでグラウンドで練習に励んでいた部活は、どこもすでにミーティングや片付けに入ってる。


「つかなんなの、何であんな運動部って至近距離るの? 萌えるんですけどハアハアハア」
「至近距離る、なんて動詞はねーし、真顔でハアハアすんな」


大体、部活やってりゃ当たり前だろ。俺だって至近距離るわ。
そう笑うかっちゃんに、うっかりオレは萌えて抱きついてしまった。


「ぅおっ、なんだよ!?」
「〜〜っかっちゃん可愛い……!」
「はあ!?」


だ、だって、だってこの子今「至近距離る」って言ったのよ!?
直前に自分で「そんな言葉ねーよ」ってオレに突っ込んだくせに!
あのかっちゃんが!
……これは俺、萌えちゃうって…!


(え? 萌えポイントがわかんない?)
(、そんなん萌えるのオレだけ?)
(わかってるわかってる、つかその方が嬉しいよ!)
(だってかっちゃんの可愛いとこなんて、他の奴に知られたくねーもーん!)


「っなせ馬鹿! 触んな!」
「いって!」


愛が高まりすぎて、ぎゅうぎゅう抱きしめすぎたみたい。
殴られて離した時には、かっちゃんはうっすら涙目だった(そーいやオレ、馬鹿力らしいね)。

……か、かわいい。


「ってめ、マジ、自分の馬鹿力考えろ! つか、TPO! TPO考えろ! マジ、……っりえね……っ」
「ごーめんかっちゃん! かっちゃんがあまりに俺的に可愛すぎてさあ!」
「、……ッ死ね!」
「いっ……!」


ゴっ、と脛を蹴られて、オレは患部を押さえて地面に膝をついた。
そんなオレに目もくれず、かっちゃんは大股で歩き出す。


「かっちゃ〜ん……」


い、痛い。ぜってー手加減しなかっただろ、かっちゃん……!
たしかに人がまだいる校庭で抱き締めたのは悪かったけどさ! 何この仕打ち!

うー、いってぇ。唸りながら顔を上げる。
すると。


5メートルくらい先で、かっちゃんが不機嫌そうな顔で、こっちを振り返ってた。


それだけで、痛みが吹き飛んでいったのがわかった。
思わず、盛大に顔がにやけた。


「……かっちゃんこそ、自分の脚力考えろよなあっ」
「……っせ。今のはてめえが悪い」


すぐ立ち上がって駆け寄って、二人で並んで歩き出す。
かっちゃんは本当に心底嫌だったらもっと抵抗するし。
本当に怒ってたらもっと殴って再起不能にするし。
それに、オレ以外のことは、立ち止まって待ったりしない。

………ふふふ。
ちょっとユーエツカン。


「かっちゃんてツンデレっつーか、ツンツンツンツンツンツンデレ、くらいだよなー」
「は? つん……何?」
「なんでもなーい」
「つかラーメン食いてえ」


……もーちょっと食いついてきて欲しかったカナー。かっちゃんのイケズ!
まー今は練習後だから、食いもんのことしか頭にないんだろーけど。
(ちなみにそんなかっちゃんも可愛いとか思っちゃう、健気なボクですけど!)


「んーじゃ、今日はラーメン屋にする?」
「ん」


頷いて、練習で上がってた体温が下がって寒くなってきたのか、鞄からマフラーを取り出して、首に巻くかっちゃん。
校門を出るあたりでデッッカイ声で玄関にいる後輩たちに「克也先輩!!」呼び止められて、機嫌良さそうに「じゃーな」って返してた。

それにまたハアハアして抱きついて、さっきより痛い足蹴りを食らったけど、気にしない!























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