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* * * * * *



結局、ハスミに車で送られて家に着いたのは、夜中2時を回った頃だった。
ホテルのベッドで2回、風呂で1回、上がってまた1回、車内でも1回ヤられた。
正直3回目でどんだけヤるんだよって思ったけど、まあ俺もノリノリだったから言わない。


「今日もヨかったぜ、ワカ。また連絡する」
「ああ」


ちゅ、と最後に車内から頬にキスをされた。
それに特に反応せず、にっこり笑って「またな」と返す。
ハスミは肩を竦めてみせて、「じゃあな」と去っていった。
それを見送り、俺はマンションのエントランスへと足を向けた。


「……腰いて」


誰ともなしに呟いた声が、空しく響く。
俺は腰を庇いながら、エレベーターへ乗り込んだ。
激しく抱かれた体は、あちこち悲鳴をあげてる。
だけどめちゃくちゃヨかったから、文句なんかいわない。
ハスミとのセックスは、何も考えらんなくなるくらい激しくて、イイ。


(……ほんと、あれさえなければ最高なんだけどな)


ハスミとの夜で、唯一嫌なところを思い出して、俺はハスミに口付けられた頬を擦った。
けど消えないあたたかな感触に、思わず、眉を寄せる。


いつもいつも、ハスミと寝ると、必ず車で家まで送ってくれて、そして別れ際に、ああいうガキみたいなキスを、される。
表情には出さないものの、俺はそれが、たまらなく嫌だった。
本当に大事にされてるような錯覚を、覚えてしまうから。

愛されてるって錯覚を覚えるのは、仮面被って笑ってるときと、セックスの時だけでいい。


最上階の最奥の部屋の鍵が、暗証番号と指紋で自動的に開いた。中に入る。
後ろで閉まった扉の音を聞きながら、俺は靴をぬぎ、部屋に上がり灯りをつける。
キッチンを素通りして、リビングの白のソファにカバンを放り投げ、自分の体もそこに投げ出した。
革の生地は冷たくて、少し気持ちいい。腰いてえし、ちょーだるい。


「……あー……」


意味もなく声を発して、軽く伸びをする。そうして、ぼぉっと部屋を見渡した。

2LDKの広すぎる空間。必要最低限の家具。そこに生活感はない。
今は外からのどこかを走るパトカーの音と、俺の鼓動がぼやけながら聞こえるだけ。
人の声はしない。うっすらと、耳鳴りがした。


俺は高校に上がると同時に、1人暮らしを始めた。
1人暮らしを始めた、というより、家を追い出された、と言った方がいいのかもしれない。
とにかく、俺はあの家を出ることを強要されたし、俺もそれに抗いもしなかった。

あの家の奴らにとって俺は完全にイラナイ存在で。
俺にとってもあの家の奴らは、イラナイ存在だったから。


『その家はあげるわ。生活費は、毎月口座に振り込むから』


与えられたのは、高級マンションの一室と、多額の金。
与えられなかったのは、たぶん、親に愛された記憶。
愛情、って言葉を何より嫌って、それなのに心の底から渇望するようになったのは、いつからだろう。


「……?」


携帯のバイブが、制服のポケットの中で鳴る。
こんな夜中に誰だよ、と思いながら、携帯を取り出した。
新着メール、一件。
迷わずそれを開いて、中を見る。
送られてきた内容に、ああ、と思った。


『今度の日曜日、空いてないか? はやく君を抱きたい』


内容は、簡潔にそれだけだった。
差出人は、顔も思い出せないヤツ。
抱きたい、って言ってるから、男でタチなのはわかったけど。
でも、それ以上の情報は、何も思い出せなかった。
























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