「いただきます」
サラダとかスープとかをテーブルに運んで、ヨウと向かい合って朝食。
飯は上手いし、おれの好きなもんばっか(ヨウはさっきめんどくせーからこれにしたっつってたけど、ほんとの理由、おれはわかってる)。
しかも目の前には、大好きな奴。
幸せだ。すげえ、幸せ。
……幸せ、だけどさあ……。
「……今日はどーすんの、泊まんの?」
なるべく普段どおりに、聞いてみた。
ヨウはトーストにかぶりついて、唇に少しついたジャムを舐めとって、答える。
「……いや、今日は帰るわ。さすがに3日連続で泊まったら親がうるせえし」
「……だぁよなあ」
たしかに、アメリカから四年ぶりに帰ってきた息子なんだ、おじさんもおばさんも一緒に居たいよなあ。
……わかるけど、さ。
そんなん、おれも同じ、なのに。
「……ナニ? もしかしてさみしーわけ、ユキくんは」
「………ばーか、ちげえよ」
ホントはそうだけど。
だってさ、言えるわけねーじゃん?
毎日ずっと一緒にいたい、なんて痛々しすぎること、……おれは女でもねえのに。
(なあヨウ、知ってっか)
お前はさっきほとんど毎日逢ってるっつったけど、“ほとんど毎日”と“毎日”はちげーってこと。
お前がアメリカ行く前は、毎日逢ってたってこと。
お前のいない四年間に、おれがどんだけ、毎日逢ってたお前に、一目だけでいいから逢いたいって、思ったか。
(知らねえだろ、わからねえだろ、わかってる)
(わかってる、お前のおれへの気持ちより、おれのお前への気持ちの方が重いって)
(……だから余計、言えねえんだよ、ばかやろう)
「あ、つかユキ、お前さ」
「え?」
突然話をふられて、おれはぱっとヨウを見た。
ヨウはサラダを頬張りながら、おれを見ている。
「この家出ろっつったら、どれくらいで出れるよ」
「……………は?」
「は? じゃねえよボケ」
………えーっと。
……とりあえず、
「ボケじゃねえよアンポンタン」
「うっせーなンなことはどーでもいいんだよ今は」
「いや良くないからね? ボケ呼ばわりされたおれの気持ち考えたことある? お前」
「じゃあお前こそアンポンタン呼ばわりされた俺の気持ち考えたことあんのかよ」
「ちょ、そうやって話反らすのよくねえと思うんですけど。ヨウってマジで昔から自己チューだよな」
「自己チューでもお前みてえな意味わかんねーやつよりマシだろ」
「はあ? 何言っちゃってんの? おれこの間付き合いたい芸能人でちゃっかり7位だったからね? すごくね?」
「つったってお前ホモじゃん、意味ねえじゃん」
「ちげーし! ホモじゃねえもん、ヨウだから好きなだけだし!」
「……」
「………」
「……とりあえず座れよ」
「………おー」
はい、これいつものパターンでして。
勢いあまって立っていた俺は、すごすごと倒れた椅子をなおして、座り直した。
はずかしいですが何か?
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