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悪戯書き集
大空展開魔術
くるんくるんと天井についているプロペラみたいなのが回っている。
「ねぇ」
私は黙ってお茶を入れている彼に話し掛けた。
「私、空が飛びたいわ」
人間素直が一番だと聞いたので思ったことを素直に言ってみたのだけれど、彼はチラと私の方を見ただけで何かを言ってくれたりはしなかった。仕方が無いので私は言葉を続ける。
「空を飛んで、未知の世界を知りたいの」
彼は無言で私の座っているテーブルにお茶を置いた。
「そしてゆくゆくは空の上の宙(そら)へ行ってみたいわ!」
「………人間が空を飛べる筈が無い」
ようやく開いた彼の口からは否定の言葉しか出てこなかった。
「空にはまだ見ぬ可能性があるのよ?人間が飛べる方法があるかもしれないじゃない」
私の口が楽しそうに弧を描くのを私は見れないけれど、彼の様子から察するにそれはそれは歪んでいるのだろう。
「矛盾してる」
「矛盾?そんなの卵が先か鶏が先かって奴よ、結局は空を飛ぶのよ」
おっと、お茶の存在を忘れていた。ティーカップを持つと啄むようにお茶を飲む。
「空を飛んでから空を飛ぶ方法を見つければいいのだわ。それに、空を飛べれば地上の可能性も見つけられるかもしれないしね」
彼の煎れるお茶はいつも美味しい。適度な甘ったるさに爽やかさをプラスしたような感じ。
「…意味が分からない」
彼はやれやれといった風にため息をつく。私、貴方が理解してくれなくて、ため息をつきそうなのだけれど。
「人間は飛べないのにどうやって空を飛んで人間が飛べる方法を探すんだ」
「あら」
彼は意外に簡単な事で否定していたようだ。私よりも頭が切れるのにこういう所には気が回らないのかしら。
「簡単じゃない、飛行機に乗ればいいのよ」

2010/03/29

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あきゅろす。
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