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続・沈熱ルビィ






魔女の声もわずかに聞こえる程度になる中、僕は彼の姿だけを瞳に映す。ここで世界が終わったとして僕が後、何を心残りに想う事があるだろう?
そう思って考えてはみてもどれもみんな、彼に関連する事ばかり。伝えられなかった想いに今この時間、それ位だけなら彼女も僕が悲観する事を許してくれるだろうか?

そんな事を考えている自分に嘲笑する。
良いだろうか許されるだろうか?

……そんなの許されもしないに決まっている。


彼を想う自分の不毛さにいい加減呆れても良い頃だと心の底から思う。
彼は彼女を想い続けて僕はそれを壊したくない。
そもそも彼を奪おうとした所で、どの可能性にだって僕の勝算のパーセンテージは存在しない。
彼女は彼を消し、そのまま崩壊の道を辿るかもしれないし、まずその消去対象に彼が入るかもしれない時点で“彼が消える”というそんなリスクのあるような僕の行動価値は見出せない。

…そんな事を望んでいる訳ではない。こんな現状の一体何処に、どうして僕が入れようというのだろう。
分かりきった事にそれでも未練を遺し、僕は立ち竦んでいるだけなのだ。

そう思いながら乾いた笑いを漏らす。
これがこの世界の最後かもしれないのに結局最後に思ったことは報われない恋の結論でした、なんて可笑しいにも程があるだろうとまた笑う。

空間に呑まれゆく笑いの端で見た光景は彼が眠り姫の唇に重ねているという最悪な場面。
出来れば見る前に空間に呑まれたかったと頭が伝える。
















「…っは、あ、」


気が付くと其処は自室。
いつものようにベッドの上にいた。

SOS団に廃部命令が下った日の深夜の寝室は、先刻の記憶に夢のような錯覚に捉われるが確かにあの空間は涼宮さんの生み出した空間であり、あれが夢ではなく現実に起きた事だと僕は感じていた。

きっと彼女はSOS団が無くなる事に不満を覚えたのであろう。なぜ白雪姫だったのかは不明だが、≪神≫としての彼女は取り敢えず、≪鍵≫である彼との結びつきに満足したようだ。
今現在こうして何も無かったかのように自室で起きたのもその結果だろう。

涼宮さんも彼も皮肉なものだと思う。
ただ≪神≫と≪鍵≫の関係という事だけで二人の知らない何かが一定の繋がりを要求し、本人たちの望まない意思で繋がる…。
その強引さが確実に二人の角質を生んでいる訳なのだけれどこればかりは僕にも朝比奈さんにも、ましてや長門さんにもどうする事も出来ない問題で。
結果僕と涼宮さんと彼の複雑な三角形が出来上がったり、そのせいで閉鎖空間の発生率が高かったりするのだけれどもこれもどうしようもない問題で。


「…いつもの日常があるだけ良いのでしょうね、」


変わらず明日には彼の姿が見られる事だけが僕の支えだ。

こうして日々は廻る。
今日もいつもと同じ、心地の悪い目覚め。
ただいつもと違う目覚め方だったのは僕が涙で頬を濡らしているということだけだった。















(愛して欲しいなんて言葉は言いません。だからどうか、愛しています…そう言う事だけは赦して下さい。)







泪で濡れた頬をそのままに僕は独り言を零す。


「…それでも僕はあなたを愛しています。」


そっとシーツを握りながら額に寄せて。
そこにあるのは僕自身の温もりだけで当然彼の温もりなんてないけれど。




















…きっとこれが“報われない恋の結論”。










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