中学編
優しい声
『よし、ここは異常なしっと。後はー…どこだっけ?』
「第一体育館だけだ」
くるりと振り返り、点検用紙にチェックをつけている副会長(幼なじみね)の魁に聞くとすぐに答えてくれた。
『第一体育館かー。確かあそこって、バスケ部の一軍が使ってんだよな?』
「ああ」
俺達は今居る第二体育館を出、バスケ部の一軍が使用している第一体育館に向かった。
外まで響くボールをつく音。外は日が落ちかけていて、空は茜色に染まっていた。もう他の部活は終わっているというのに、バスケ部の一軍はまだ練習しているようだった。
ガラガラガラ―――…。ドアを開けると中にいた三人が手をとめ(一人は菓子を食っているが)、こちらを見る。とりあえず靴を脱ぎ、じゃまするぜ。と言いながら入る。魁も後に続き入ってきた。すると身長170pぐらいであろう赤髪少年が近づいてきた。確かコイツは、主将の赤司征十郎だったか。にしても身長低いな。ぜってー本人には言わないけどな。言ったら俺は次の日には死体化してる。
「生徒会長と副会長が何の用だ?」
『点検だ点検』
「悪いところがあれば報告してくれ。時間がかかる修理は後日だが、簡単な修理なら今すぐ直せる」
「では簡単な修理を頼む」
「分かった」
『んじゃその話は魁に任せるわ』
俺はそう言い舞台に座り携帯を開く。魁以外の生徒会役員(二人だけだが)に、明日HRまでに生徒会室集合というメールを送る。
パタッと閉じ、顔をあげると朝合った顔が居た。
「何でアンタがいんの?赤司も知らねぇ奴と話してるし」
『生徒会の仕事だ。で、アイツは水野魁つって俺の幼なじみで生徒会副会長だ。』
「ふーん」
青峰は俺の隣(バスケットボール二個分くらいはあいてるが)に座り、首にかけていたタオルを頭に被せ、汗で濡れた髪を拭いていた。
息は切れてねぇが汗だくだ。やっぱり練習は厳しいんだな。なんて思っていると、ドアの方から「青峰っちー…」という声が聞こえた。
ドアを見ると、かの有名な金髪イケメンモデルの黄瀬涼太が近づいてきた。
彼は膝に手をつき、ゼェゼェと息を整えていた。
「あ、お峰っち、は、速すぎッス…」
「テメェが遅すぎるだけだ」
「いやいやいや、青峰っちは速すぎッス。ってあれ?誰スかこの人」
黄瀬が顔をあげると丁度俺と目があった。何回も言うのもめんどくせぇよ。二人に『もう着替えてこいよ』と言うと青峰は「そうするわ」と言いながら舞台を降り、黄瀬と一緒に着替えにいった。
他の部員も全員気づけば居なくなっていた。俺は腕を組み、魁の仕事を見ることにした。
―――カチャカチャ、と何かを直す音だけが体育館に響く。おもわず、眠気に誘われ、うとうとしそうになる。そういえば最近寝てないなー、とか思っていると、本当にヤバくなってきた。
意識が薄れていく中、優しい声が聞こえた気がした。
(その声は、ずっと昔から聞いている声)
(それはとても心地いいものだった)
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