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巡り会えたのは
命令です



「キャー!!黄瀬君こっち向いてぇー!!」


「サイン下さい!!」


「アタシもアタシも!!」



女の子達の黄色い声に頭が痛くなるが気にせずにずんずんと中に進む。やっとのことでたどり着いたが、疲労感がやばいです。


どうやって連れ出そうか黄瀬君を見ながら考えていると、ばち、と目が合った。



「あ、神崎さん」



彼がそう言った瞬間、ぴたっと静まり返る集団。え、凄い。



『何やってるの。みんな待ってるんだから早く行くよ』



困り気味だった彼の手を無理やり引いて集団から抜け出す。後ろから聞こえる罵倒を聞こえぬ振りをして。



『ごめん、遅くなった』


「いえ大丈夫ですよ」


「………」


「黄瀬君?」


『ん?』



黒子が黄瀬を見て首を傾けた。黄瀬の様子が変なことに気がついたのだ。


俯いていて表情がよく見えないが彼は小さく「……手」とだけ呟いた。



『あ、ごめん』



そういえば繋いだままだったと、言われてから気づき手を離した。それでもまだ俯いている黄色い頭をわしゃわしゃと撫でてやる。



「わ、わっ!」


『いつまで暗い顔してんの?ほら笑いなさい。黄瀬君には笑顔が合っていると思うの。だから笑え』


「命令口調っスか」


『ええ、命令だもの』



きっぱりと言えば「なんなんスか、それ」と呟きながら小さく笑った。笑うとますますイケメンねぇ。



ぐるるるる…



『…誰の音?』


「あー…オレだ」


「青峰っち…」


「見事に雰囲気ぶち壊しですね」


「うるせえ。仕方ねぇだろ、腹減ったんだからよ」



椅子に凭れていた青峰君はもう限界とばかりにお腹を押さえだした。そんなにお腹空いてるの?まだお昼になってないよ。



『だったら近くのマジバに行こうか。自分の荷物は自分で持ってねー』



腹が減った腹が減ったと連呼する青峰君に軽く蹴りを入れてからデパートを後にした。



(テメェ!なにすんだ!)
(うるさい。早く行くよ)
(……あの人、本当に女の人なんスか?)
(そうであると信じたいです)





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