巡り会えたのは
届け
うるさい目覚ましと共に浮上していく意識。いつもなら二度寝をしたりするのだが今日はそうはいかない。だってあの子達が居るのだから。
パパッと服を着替え髪をとかし、簡単にメイクをしてからあの子達を起こしにいく。黒子君は起きていたけれど、びっくりしたことが1つ。
『何、その頭』
「寝癖です」
それはわかるけどさ。こっちが聞きたいのはどうしてそうなったか、だ。
「いつもの事なので気にしないで下さい」
気にするわよ。そんなに爆発してちゃ。というかいつもなのか。いつもこんな凄い寝癖なのか。――本人も気にするなと言ってるしここはスルーしよう。いや、した方がいいな。
『じゃあ私は朝ご飯の準備するから二人起こしてリビングに連れてきて』
「わかりました」
そう伝え、私はキッチンへと向かい朝ご飯の準備を始める。私は基本、朝は手抜きだ。パンを焼いて、その間に野菜を切ってサラダを作る。朝は大体こんな感じ。
三人を椅子に座らせて全員で食べる。嫌がっていた奴もいたけど、一応一緒に食べてくれる。今まで一人だったからちょっと不思議な感じだなぁ。
『君達、後で必要な物を買いに行くから出かける用意してね』
黒子君は頷いてくれたが、他の二人は顔をしかめた。そんなに嫌かい!でも否定しないからよしとする。にしても黄瀬君と青峰君は食べるのが早いな。この二人は皿を片付けてさっさと部屋に戻っていった。
『―――ねぇ、黒子君。あの二人っていつもこんな感じなの?』
むしゃむしゃとサラダを食べながらずっと気になっていた事を聞いてみた。だってあの二人、口数少ないし、雰囲気がピリピリしてるんだもん。
黒子君は「いえ…」と答えながら言葉を繋げる。
「いつもはもっと喋ります。とくに黄瀬君はうるさいぐらいに」
―――ああ、やっぱり。そりゃあ見知らぬ女の家なんかに泊まるともなれば、警戒ぐらいするだろうね。そうはわかっていても、あからさまに警戒されると――悲しい…。
私の表情を見てか、それとも雰囲気を察してか、黒子君は私の頭を優しく撫でた。
―――そっと、優しく、私が黒子君にしたみたいに。
『――はは、今度は逆になっちゃったね…』
乾いた笑いを零す私に、彼は無言で撫で続けてくれる。何だかそれが嬉しく思えて、私は彼に笑いかける。
『―――ありがとう』
この言葉と一緒に―――…
(泣き笑いになっているかもしれない)
(それでもいい)
(この言葉が届いたのならば)
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