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夢小説
海水

どばん!、と海にけたたましく自分の体
が打ちつけられたのがわかった。悪魔の
実を食べる前からカナヅチだった私に
とってみたら死亡フラグもいいところ。
いやだなあ、溺死。酸欠ってかなり苦
しいらしい。



help me!




こんなことになったのも、エースさん
のせい。だって甲板の隅で兄弟喧嘩を
おっぱじめて、その上海に突き落とさ
れるものだがら、私は手を伸ばしてそ
の手を掴んでしまった。そこで能力を
使って甲板に戻せたらよかったものの、
まだ視界に入っていないものとの場所
交換は上手くできないし、自分と交換
したら確実に自分は助からない。じゃ
あどうしよう、なんて思っていたら私
も落ちた。そもそも体重40sの私が60
sあるであろう人物を引き上げるのな
んて不可能。どうしてそんなことにも
気づかなかったのか。それ程までに焦
ったのかもしれない。自分がせっかく
助けた命を無駄にしたくなかったのか
もしれない。ぶくぶく。口からもれる
空気が気泡になって上に上がっていく。
それを怨みを込めて睨んだ。
きっと誰かが助けてくれるとわかって
いても怖い。そもそもカナヅチな私は
この果てしない空間が嫌いでたまらな
い。自分を支えてくれるものが何もな
い。視界に入るのは水だけ。水泳の何
が楽しいのか理解に苦しむ、本当に。
体に全く力が入らない。浮かばない。
沈んでいく。未だに握っているエース
さんの手には全く力が籠もっていない。
大丈夫だろうか。…大丈夫な気がしな
い。上手く力が出せない体でその手だ
けは離さないようにと踏ん張る。離し
てやるもんか!

体が引っ張られる。誰かが私の腕を掴
んだ。
溺れないようにと息を止めていたら頭
がふわふわと、なんだか上手に動かな
い。視界が晴れ、海とは違う青い空が
目一杯に広がった。甲板の固い木の感
触が膝に伝わる。
「大丈夫か」
誰かに声をかけられた。耳鳴りが酷く
て何を言っているのかがよくわからな
い。ああそうだ、エースさんは。いつ
の間にか握っていた手の感覚がなくな
っていた。体を動かすのが億劫で、目
を動かせば直ぐそばにエースさんが寝
かされていた。辺りでは呼吸してない
とか、心臓が止まっているとか騒いで
る。これだから知識がない人は嫌なん
だ。私は右手をぎゅっと握って、結構
強くエースさんの胸を叩いた。周りの
人が何をしてるんだと言わんばかりの
目をこちらに向けた。
「心肺蘇生をします」
声はかすれて力がなかった。…まずは
気道を確保、そして息を二回吹き込む。
肋の真ん中あたりに手を置いて、胸部
圧迫。いち、にー、さん、しー…。30
回したあたりでもう一度息を二回。
「どうして、起きないのよ…」
いらいら。苛立ちが手に力を籠もらせ
た。
「…、……」
ぽたぽたと濡れた髪から水が滴る。し
ょっぱい。海水だからなのか、なんな
のか。その時、ゲホッとエースさんが
水を吐き出した。ああ、やっと起きた。
ゆっくりと起き上がるエースさんに腹
が立って、胸を軽く叩いた。痛い。そ
うでもないクセに、エースさんは言っ
た。顔じゃない分いいじゃないか。
「なんだァ泣いてんのか」
エースさんもあまり声がでないのか、
かすれている。手が頬に触れて、撫で
た。珍しくその手は冷たかった。
「海水だよ、ばか…」




:)海に落ちたとき、近くに海王類がい
て救助が遅れたそうです。


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