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噂の恋人(Shanks※!閲覧注意!切)

この海賊時代、あらゆる宝は手に入れてきた。
黄金、宝石、財産・・・
その日その日の戦い合った友との宴は最高に楽しいもんだぜ?
その日限りのバカ騒ぎは、一日もすると二日酔いとしてまた現実に引き戻されるってわけだ。


*    *   *


ガハハハ!とオーナーと一緒に居酒屋で声をあらげて笑うのはシャンンクスとその海賊団たち。

「ところでシャンクス、例のあの島で“拾った”宝は、今船の上にあんだろ?」
「ああ、そうだ。誰も目のつけられねえ場所に閉まってある。」
「船長・・・」
まるで同情を買うようなクルーにシャンクスは珍しく小さく怒鳴る。
「やめろ!お前もお前だ。あいつは、自分の意志でこの船を降りた。以前は“仲間”だったとしても、あの女のことはもう忘れるんだ。」
「あ、ああ・・・す、すまねえ船長。」
船長の“仲間”という言葉には、少しだけ、哀しい感情が入り交じっている。
「・・・なあ船長?」
グイッと一杯飲み干す船長に、船員が懸念を浮かべながら口に手を当て船長の耳元に近づけた。
「何だか・・・さっきからずっと胸騒ぎがすんだ。俺たちが入ってきたときのあのオーナーの目、俺たちの事はしらねえと言っていたが・・・俺ア、何だか嫌な予感しかしねえ。しっかりそこに閉まってあるか、確認がてら行ってくるぜ。」
ガタッと立ち上がる。それを見て、シャンクスは呼び止めた。店長がこちらをちらりと見たのを見逃さなかった。
「・・・待て。念のため、お前一人では行くな。もう一人連れて行け。」
シャンクスは、オーナーが後ろを振り返った瞬間に、・・・まだ酔いが回っていない船員に、“こいつの護衛を”を意味する合図を送った。



まさにこれは、静かなる戦いの口火。誰にも気づかれてはいない、
・・・筈であった。オーナーもまた、後ろに居た刀を持つ者たちにも同じように合図を送った。

―――――――“船へ”


on the ship

「くっそおお!やっぱり無え!中身は空っぽだ!」
「だが、なんでだ?そこだけしか奪われてねえ。他の宝は、一つも手をつけてない。」
「俺たちに感づいて、とっとと去って行ったか?」
「俺たちをはなっから知っていたとすれば、時間は十分にあった筈だ。」
「・・・ちっ。俺たちもその餌食みたいだぜ?」
二人はゆっくりと後ろを睨みつける。ザッと15人。刀を持っている。中には小さな子供もいた。
「くそ・・・!ふざけやがって・・・!」
振り下ろされた剣。
「早く・・・船長に、報告しねえといけねえのによお!」

船の上で剣の音が響き渡る。無情にも始まった争い。

in the bar

「・・・で、今、お前何て言った?」
中は騒然としている。シャンクスが怒りをあらわにして、オーナーの胸ぐらを掴んでいる。
「だから、頼まれたんだよ。カタカナ推奨って女に。海賊が来たら、気づかれないよう船の上を探せって・・・」
・・・・カタカナ推奨?
が海賊?
いや、そんな事はありえない。何かの間違いだ。信じたくもない。
「で?」
「やっと見つけたんだ!これで俺たちは、もうこんな事をしなくて済む!あの女が欲しがってたモノだ!」

バタン!と傷だらけの二人が、幼い子供を掴み上げながら入ってきた。目線が一気に集まる。その姿にシャンクスの目の色が変わった。

「船長・・・!やっぱり、“深紅の真珠”が奪われてた!」

シャンクスの船員たちもまた、陰密な行動と、仲間が傷つけられた怒りをあらわにして、立ち上がった。まさに、また争いが始まろうとしたその瞬間、扉に目を向けたオーナーの目の色が変わる。

「あ、あ・・カタカナ推奨・・キャプテン・・、」
「!?キャプテン・・・だと?」
そこには船長―キャプテン―と呼ばれ、身なりもそのものらしく威厳を少しばかり感じさせるカタカナ推奨の姿。
何も驚く様子もなくこつこつと居酒屋のど真ん中に座る。
「オーナー。もう約束の時間だ。」
「あ・・・、待ってくれ・・・もうすぐ、アレを持った仲間が帰ってくるんだ。」
カタカナ推奨は疑い深いような瞳でうっすら笑って見つめ返した。
「あの約束は覚えてるんだろ?もし、手に入らなかった時は・・・」
「ま、待ってくれ!本当に手に入れたんだ!」

オーナーが必死に訳を話す。しかしカタカナ推奨は聞く耳も持ってないようだ。
「まーしかし、しばらく会ってねえうちに、随分変わったもんだなあ・・・なあ?カタカナ推奨。」
カタカナ推奨は不意に声をかけてきたシャンクスに一瞥をやる。
「あら。久しぶりね。シャンクス。」
表情も変えず、同じような微笑みを返した。
「お前は前から、こんなゲス悪い趣味なんか持ってたか?」
「悪い趣味とは、聞き入れがたいわ。そもそもこんな私にしたのは貴方でしょう?」
「はあ?全く身に覚えがない。」
「知ってる?“深紅の真珠”。まさか貴方たちが大事そうに持ってたのは、私ですら信じがたいけど。私はある船長から一つの宝を受け取った。それが深紅の真珠。でも、一年前、私は海賊になりたくて、ある男と別れを告げた。私が貰ったその宝は比べようも無い程、相当価値があるものなのね。その男は、私が海賊になる事を許してはくれなかったわ。でも最後まで・・・」

女は続けようとして言葉を止めた。
その代わりにシャンクスが言葉を紡いだ。

「これは、また別の島で捨てられていて、偶然拾ったんだ。小さいものだが、一つの箱に色んな宝と一緒に閉まっておいた。きっと、もうこれは必要ないと女が捨てたと思って。」

「それでも貴方は拾ったのね。そして今でも大事そうに宝箱に閉まってある。」
カタカナ推奨は妖艶な笑みを浮かべている。

「でも、またなんで、お前はそれを取り戻そうとしているんだ。」
震えるオーナーの胸ぐらを放すと、足がふらついて尻餅をつく。それを見たカタカナ推奨は、クスッと笑った。そしてまた、目線をシャンクスに戻した。
「一つ言っておくわ。あれは別の海賊に奪われたの。私の気づかない間に。そして色んな事を考えたわ。貴方たちが、私にやった事を後悔して取り戻しにきたのではないかと・・・。

でも、もし、島で偶然拾ったというのが本当なら・・・。」

シャンクスは、同じ口調で言葉を続ける。
「お前をこんな風にした俺にも責任はあるかもしれない。

だが、お前が今までやってきたことや、お前が今日、やった事は、俺が望んでた事ではない。刺客をやり、仲間を傷つけられた事は・・・一生許せない。」

「・・・」

「なんで、俺のそばから離れたんだ・・・。」


「しょうがないの。私の心が、今まで求めていた事だったの。誰にだって、譲れないものがあるでしょ?私の場合、海賊になることが・・・、私にとって譲れないモノだっただけの話。」



“深紅の真珠” 意味 “深い愛情”


小さな頃に抱いた強い思い。その道にある自分の未来図を描く日々。
不器用な女が、選んだ道。
夢を捨ててまで愛をとるか、愛を捨ててまで夢をとるか、それとも――――

どちらが幸せなんて、きっとその道を進んだ本人にしか分からない。

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