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誤解
部活の帰り、俺の足は、昨日のアパートに向かっていた。どうせ、帰り道だ。

建物を眺める作業着の男の中に、声をかけてくるものがいた。

「あれ、秀麿くんじゃないかィ? しばらく見ない間に、大きくなったもんだねィ。相変わらず、目立つねィ、お前さんは。どうだい、家の方は、どこか、修繕必要なところはないかい?」

家に出入りしている土建屋の親方だ。腕のいい棟梁だが、話が長い。

このジイさんには、相手の返事を待つつもりなどない。いつも、機関銃のように喋り続ける。

「いやね、知りあいの大家のアパートが、火事でねィ、見てこの通り。もう、これじゃ、一から立て直さないとだめだね。あいつァ、ケチだから、リフォームで何とかしろなんて、泣きついてきたけど、これァ、無理だ。まあ、ケチといってもね、なかなか、いいとこあるんだぜィ」

俺は、少し強引に、ジイさんの話を割った。

「誰か亡くなられましたか」

「え、何、火事の話? ああ、お前さんの友だちでも住んでいたのかい? それなら、大丈夫だ。両親に見捨てられて、一人で住んでた高校生だろ? 大家の奴が家に引き取った。あいつの家も狭いのにね、ケチのくせに、ほんと、いいところはあるんだからね。そうだ、お前さんの家、広いだろィ? 友だちなら、預かってやればいい」

ジイさんは、ニタリとして顎を撫でる。

「お前さん、そのつもりで来たんだね。お前さんのところには、どうせ、昔っから、いろんな居候が、たむろしてたね。使用人のほとんどは、半分居候のようなもんだ。俺が、大家の奴に、言っておいてやるよ。相変わらず、お前さんは、ほんと、気の回る子だねィ」

年寄りの話は、総じて長い。長くて、誤解と、独りよがりに満ちている。

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あきゅろす。
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