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ルパンの恋人U
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「何で、あいつなの?あいつ、お前を大事にするのか?あいつといて楽しいのか?あいつ、俺よりもお前を必要としてるのかよ」

俺は、ぼろぼろと言葉をこぼしただけだった。

正直、銭形のとっつァんは、お前には不似合だ。アクが強すぎる。どれだけ大事にされていようと、あんな奴は、お前には似つかわしくない、そうでしょ?俺ともっとアホみたく楽しく生きていけばいいじゃん。ね?で、互いに彼女とか作ったり失恋したり、もっと、ふわふわ生きていけばいいじゃん。俺と一緒にさ。

「あんな奴のものになるなら、俺のものになれよ。俺、お前が好きだ」

ルパンは、唇の端で少し笑って、溜息をついた。

「アホか。俺は誰のものにもならない。それに、お前のそれは、恋愛感情じゃない。血迷うな」

恋愛感情じゃなければ、じゃあ、何だよ、この気持ち。俺、銭形に嫉妬してる。お前があんな奴に自由にされているのかと思うと、腹が立ってたまらない。

「俺、お前に欲情できるし」

今朝だって、夢の中のお前に、弾けちゃったんだよ?

「そいつは、勘違いだ。安心しろ。お前が俺に恋愛感情持っているなら、キスさせてねーよ。そんな残酷なことするわけねーだろ」

「じゃ、俺、お前にキスしてもいいんだよね?これが恋愛感情じゃないってならさ、そういうことでしょ?」

俺は、ルパンの腰を引き寄せて、顎を捉えた。抵抗がないのは、俺のこの気持ちがお前に対する恋愛感情ではないと、無言で、言い張るつもりらしい。

キスすると、ルパンは、やはり、応えてくる。目もつむらないで、受け流すように応じるだけだが、今日は、背中に手をまわして、ポンポンと撫でるように優しく叩いてきた。

これって、俺への慰めなのか?憐れんでいるのか?

一歩先に進んで、見下ろすような態度に、猛烈に腹が立ってきて、ブロック塀に抑えつけるようにして、深くその唇を犯す。荒々しく喰らいつくように。

通行人に変に思われようとかまわない。行き交う靴音や、自動車のドアの開閉音が聞こえてくるが、気にもとめない。

無我夢中でキスをする。捨てられかけた子どもが、必死で母親にしがみつくかのように。ああ、そうだ、俺、こいつに、捨てられるのが、怖いのかもしれないね。

さすがにやりすぎたのか、ルパンは俺の胸を押し返してきた。だが、ルパンを抱き込んで、必死で抑えつける。どうだ、窮鼠、猫にむしゃぶりつく、だ。

俺の必死さに驚いたのか、ルパンは、仕方がない、といった風情で、やむなく、大人しくキスされたままになった。

くそ、俺、こいつを取り返すためなら、何でも出来そうだ。こいつを抱けば、こいつが、俺だけのルパンに戻るというなら、俺、こいつを抱けるよ?抱いちゃえるよ?

大人しくなったルパンに、今度は、キスを優しいものに変える。口腔を丁寧に舐めほぐす。心をこめて、ひたすら、優しい口づけを与える。

ルパンは、俺の腕の中で大人しくなされるがままにされている。

無我夢中でキスしていたから、その声が、俺に向けて発せられたものだとは気がつかなかった。

「ごめんね。その子を離してもらえる?」

肩を叩かれて、やっと、後ろを振り返る。何の用?邪魔しないでよね?

背後に、大きな影が立っていた。ルパンは、もとより気が付いていて、俺の唇が離れると、そいつの顔を見ながら、唇を手の甲で拭っている。ルパンは、やはり、顔色一つ変えなかった。










俺とキスしているところを、恋人に見られても。

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あきゅろす。
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