ルパンの恋人U 4 俺は、いつものように、ルパンの家のこたつで、寝そべっていた。いつもと違うのは、俺の心境だ。この前ここに来た時とは、その心境は全く違っている。正直にいえば、ルパンが動くたびに、ドキっとしている。 「お前さ」と、声掛けられるだけで、ビクッと飛び上がりそうになるのを必死でこらえなきゃならなかった。裏返った声で返事してしまい、やむなく、咳払いでごまかしたりしている。 そんな小心者になっちゃった俺の横で、ルパンは、鳴った携帯を取り上げて、事務的に話している。「わかりました。じゃあ、明日はキャンセルですね」などと。 すました横顔を向けているルパンは、俺が、隙あらば、押し倒してやろうと企んでいるとは夢にも思っていないだろう。いや、もう一人の俺がね、そういうこと、考えてんの。で、もう一人の俺は、ルパンに手を出そうとする俺の足を必死で引っ張っている。この想いは、失恋しすぎて頭がおかしくなっただけで、勘違いだと。 ルパンに向いたこの気持ち、俺にも何なのか、わからない。いつもの恋とは絶対に違う。胸がキュンキュン、なんてことは全然ない。でも、こいつを腕の中に抱き込んで俺だけのものにしてしまえれば、どんなにホッとすることだろうか、なんて思っている。 こういうの、何だろうね、恋?それともただの独占欲? バイト先からの連絡だろうと思って油断していれば、何やら物騒なことを口にする。 「あまり撃たれないでください。いつか死にますよ」 は?誰に向かって話してんの?ウたれる、とか、死ぬとか、ひょっとして、兵隊さんか?大日本帝国万歳なのか?それとも、(鞭)ウたれるとか、逝く、とか、そういう感じの大人の遊びか?縄とかローソクの方か? ゲームするふりして、聞き耳を立てている俺に、ルパンが携帯を閉じる直前に述べた短い言葉は、不意うちをかましてきた。 「あなたが好きです。ではまた」 ルパンは、愛の言葉を述べた。とても短く、とても直接的に。だから、「明日は晴れです、ではまた」と、一瞬、聞き違えたのかと思った。 しかし、ルパンは天気予報士ではない。 [*前へ][次へ#] [戻る] |