ルパンの恋人U
3
あ、おっぱいがないんだ!
そりゃ、ルパンには、おっぱいないよな。あるわけないじゃん。
でも、ないのって、結構、寂しいんだな。ルパンにおっぱいついてたら、いいのにな。
そんな勝手なことを考えた俺の頭を小突いてくる手がある。
「ヤッチン、こたつで寝るな。もう帰れ。そろそろレクイエムの時間だぜ?」
…………ん?
目を開けると、先ほどと同じ姿勢で座ったままのルパン。着衣は、乱れていない。
何だ、今のは夢か。
思わず、ルパンの胸を見ると、やはり、平たい。
現実でも、ルパンには、おっぱい、ないか。
ルパンが、冷ややかな視線を投げつけている。
「おいおい、その手の動きしながら、俺の胸見るの、やめろ。激しくキモい」
「あ、ごめん」
俺は、空気をもみもみしていた両手のひらを下ろした。のろのろと帰る支度をする。
「携帯忘れるなよ」と、声をかけてくれる、気の回る親友。
「コートのボタンちゃんとしろよ。風邪引くぜ?」
ちぇ、保護者気取りか。お前にとって、俺は何なんだよ。
親友と恋人、どっちが位、高いのかな。
外に出ると、薄い月が出ていた。薄く笑うお月さま。あんたまで、嘲ってるのか俺の寂しさを。
本当の愛とか、真実の抱擁とかを知らないまま、死んで行くのかな、俺。
さみーな。
さみしーな。
コートのポケットに手を突っ込んで、とぼとぼ歩く帰り道、しかし、俺は神様に見放されていなかった。
天啓が舞い降りる。
後ろから抱けばいいんだ!!
そっか、ルパンを後ろから抱けばいいんだ。ならば、視覚的には、寂しくない。で、枕でも、揉んでりゃいい。
ルパンにあんなことやこんなことの計画を企み始めた俺の足取りは、とぼとぼから、やがて、スキップになった。
20100520 終わり
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