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ルパンの恋人U
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ルパンは、眠ってしまったらしい。こいつの寝顔なんて見るの、いつぶりだろう。修学旅行のときでも、最後まで寝ない奴だ。酔ったって、居眠りなんかしない。常に隙を見せなかったルパンが、あいつのせいで、こんなに腐抜けた奴になるなんて。

親友の寝顔は、いつもの斜に構えた姿とは、まるで別人で、ぎょっとする。

こいつ、こんなに、柔らかい感じだったっけ?

いつもなら、とっつきにくそうに、硬く閉じた唇が、ゆったりと笑みを浮かべている。甘い果実を口に含んでいるみたいだ。意思が強そうにまっすぐに伸びた眉は優しく緩み、何でも見透かす鋭い目は、今は瞼が閉じられて睫毛があえかに揺れている。

あの男には、こんな顔を見せるのか。普段は、ふてぶてしく何考えているかわからないような面下げているくせに。

程よく筋肉のついた肢体を無防備に投げ出し眠る様は、誇り高い雄豹が、仲間の庇護のもと、狩りの合間に、束の間の安息を得ているかのようだ。

蒼さの残る清廉な顔立ちに、甘やかな風情を漂わせているのが、何とも艶めかしい。

こいつ、本当に、あの男に抱かれてるんだ。あの男に、本当の快楽を教えられ、その味わいを覚え込まされてるんだ。超奥手で色ごとには疎い奴だったのに。

情交の余韻が残る、あまりにもしどけない姿。はだけたシャツから垣間見える肌は、いまだ熱を宿したままで、いいようもない淫らさがある。

銭形に組み敷かれ、指を咥えさせられながら、好いように体を扱われているルパンの姿が頭に浮かんでしまう。

誰よりも冷徹で強靭な精神を持つはずの親友が、恋人にされるがままに、その体をさんざん貪られているなんて。

思わず頬に手を伸ばすと、恋人の温もりと勘違いしたのか、俺の手を、唇で追いかけてきた。俺の指に夢見心地のまま口づけてくる。

こいつ、ルパンじゃない。別の誰かだ。

こんな腐抜けた奴、ルパンじゃない。

頭にかっと血が上る。

俺の知らないルパンなんて、あってはならない。

理不尽にも、怒りがわく。怒りが、体を勝手に支配する。

俺は、ルパンの全部を知る権利がある。こいつは俺の親友だ。俺のものだ。

俺は、ベッドに膝をつき、恋人の温もりを夢で追うルパンの上に、屈みこんだ。きっと、ルパンなら、俺が何をしても許してくれる。

ルパンの上に跨る。恋人の痕跡を消すには、更に、その上に痕跡をつけるしかない。そうやって、俺の親友としてだけ存在する、ルパンを取り戻すんだ。

その淡く緩んだ唇に、俺の唇を近づける。

その唇は、微かに動いていた。微かな声が、鼓膜を揺らす。








「あなたの……たま……が、好きだ」

ルパンは、うわ言のように繰り返し囁いていた。








……………………たま?


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あきゅろす。
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