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ソノ恋、逃レル不能
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まりちゃんは、安田に、足を向けた。しかし、一歩踏み出したところで、足を止める。

俺が、手首を掴んだからだ。

まりちゃんにとっては、俺など振り払うのは、いともたやすいことだろうが、それをせずに俺に振り返った。

俺は、その目を見返し、低い声で囁いた。

「あいつは、ただのアホだ」

まりちゃんは、じっと、俺の本心を探るような顔で、目を合わせてきた。もっと何かを言いたかった。だが、俺には、それ以上の言葉は見つからなかった。ただもう一度、「あいつは、ただのアホだ」と繰り返した。

まりちゃんは、黙って見透かすような目を向けて、何を思ったか、不意に、ニコッと笑った。

ひまわりの笑みだ。

くそう、ひまわりめ。このひまわりは、本物だ。何考えてやがる。

胸が、ぎゅっと鷲掴みにされて、そして、切ない痛みが走る。

畜生、俺、まだ、こいつに惚れたままだ。オッサンなのに、もう、オッサンだとわかったはずなのに、まだ、好きだ。

くそう、俺、変態になっちまった。こいつに変態菌、感染された。さっきのキスで。ド畜生。

急に、屋敷の奥の方で、ざわめきが起こり、開け放った窓から、物音が漏れ聞こえる。

安田の注意も、家の中へと向かう。

「あれ?何か、騒がしいなあ。クラスの連中、金目の物でも、盗んでいるんじゃないだろうなあ」

呑気な声で言っている。本当に、こいつのアホは、いつでも、うざったい。何か、安心するくらい、うざったいぜ。








「校長、無地、発見。やはり、地下、避難部屋に監禁されていました」

まりちゃんのアリさんイヤホンから、そう聞こえてきた。

「おう、ご苦労さん」

まりちゃんが言うと同時に、家の中から、数人の影が出てきた。

黒い男たちが、物々しい足取りで、一人の老人を、その真ん中に支えている。

「うおい、誰?こいつら。何、人の家に勝手に侵入してんの?真ッ昼間から、泥棒か?」

男たちの姿に、驚きの声を上げた安田は、真ん中の老人の姿に気づき、間抜けな声を出した。

「あれ?校長先生?」

安田は、どこまでも呑気な声を出して、ポカンと呟いた。

校長は、腹の肉がたっぷり増えて、ますます狸っぽくなっていた。







俺の目の前で、安田が、特殊部隊の男に、取り囲まれていく。

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あきゅろす。
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