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ソノ恋、逃レル不能
3
黒い男は、まりちゃんの顔を見て、少し、後ろに引いた。ゲッ、驚いた様子。

ヘルメットの顔面部を上げて、まりちゃんに、遠慮のない視線を向ける。

こいつ、まりちゃんの何………?

知り合いとか、そういうのではない、仲間、というのがぴったりの空気感がある。何で、女子高生のまりちゃんが、こんな武装した男とツレなの?

大体、SATとか特殊部隊とか、一般人に顔見せちゃ、まずいんだろ?俺、ばっちり見ちゃったぜ。

そう考えてみながらも、先ほどから無意識のうちに受け取るのを回避していた答えが、もう目の前に突きつけられていることを薄く悟る。

やっぱり、まりちゃん、そうなの……?まりちゃんって……。

「班長、何スか、それ。そのナリは。まるで化け物ですぜ」

ふうん、まりちゃんって、班長さんなんだ。遠足の時に、先頭歩いて、「みんなしっかり、ついてきてねー」とか言うタイプなんだ。

つうか、お前らとは誰も同じ班になりたくないわ。遠足でイノシシとか捕まえそうだろ。弁当タイムに、そいつ火あぶりにして食いそうだろ。野原の散策が、野外訓練になりそうだろ。せっかくの遠足が、トラウマになるじゃねーか。

まりちゃんは、じろりとその男を睨んだ。

「女装をコレに頼んだら、こうなったのよ」

コレと、いうところで、小指を突き立てた。

それって、昭和時代のオッサンがする仕草じゃね?今どきの女子高生でそれをやっていいのは、志望校全部落ちて、「将来の夢は、M1グランプリです」っていうくらい方向転換したときだけだろ。

いや、そこは、今のツッコミどころじゃない。俺、しっかりしろ。

「班長、その女に遊ばれましたね。いつも言ってるでしょう、女は選んでください」

「うるせーや。で、見つかったの?」

「地下室に、ガキどもとは別の、生体反応があります。多分、そこにいると思われます。そこは、どうやら、災害時の避難部屋になってるようです」

「そう」

まりちゃんは、男の胸ポケットから、煙草の箱を奪うと、一本取り出し、口にくわえた。男に火をつけてもらうと、長々と煙を吐き出した。

んー、とか、あー、とか言いながら、肩を、ぽきぽき鳴らしている。

あー、まりちゃん、いけないんだいけないんだ、煙草なんか吸っちゃってー。

つうか、お前、うまそうに煙、吸いすぎなんだよ。しかも、それ、赤ラークだろ?吸いすぎるとイ○ポになるって、もっぱらの噂だぜ。あ、お前は、女の子だから、関係ないよな。つうか、女の子のくせに、シブい銘柄のヤニ、目を細めて吸うなよ。メンソ入りのにしろよ…………。










……………つうか、こいつ、とうとう、化けの皮を脱いじまったな。やっぱり、まりちゃんってば。

俺の目の前にいるのはどう見ても。










オッサンそのものだった。

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