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ソノ恋、逃レル不能
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みんなでワイワイしているなか、俺は、一人抜け出した。勝手知ったる安田んち。ひっそりと静かな裏庭に出た。

裏庭は、雑然としている。雑草もまばらに生え、剪定梯子や、芝刈り機などが、軒下に、出しっぱなしになっていた。平日ならば、庭師がたくさん出入りしているはずだ。この季節は、それらの用具を物置に片づける間もなく、手入れに勤しまなければ、広い庭は荒れ放題になる。

まあ、安田の奴は、金でも恋でも、手に入れ放題だな。一方、俺の心は荒み放題だけどな。極寒の地よりも、吹きすさぶ荒野になってるよな。

まいった。俺は、本気で、まりちゃんに、恋している。まりちゃんが笑いかけてくれれば、舞い上がり、まりちゃんが、安田を見ていたら、急に落ち込む。この激しい気分の上下が、全部、まりちゃんの表情や行動に支配されている。

うきうきしたり、急に沈んだり、自分でも、感情をコントロールできない。まりちゃんは、何をするか予測のつかないタイプだし。存在そのものも訳わからないわけだし。

俺、本当に、とんでもない相手に恋をしてしまったな。

苦い思いが、喉にこみ上げる。

俺、もっと、早く、まりちゃんの良さに気づけばよかったな。安田の方が、先に、まりちゃんに恋してた。俺は、女子高生としてすら、受け入れるのに苦労したのだし。オッサン、と、はっきり、言ってしまったこともあった。キモいとか、変態とか思ったこともあった。俺など、まりちゃんに恋する資格はない……。

まりちゃんの笑顔、俺だけのものにしたかったな。あのひまわり、俺のためだけに咲いてほしかった……。

こんなに、深く誰かを好きになったことがない。外見で、可愛いな、と思ったことはたくさんあっても、こんな胸の奥まで、がっちり掴まれるような想いはない。まりちゃんが、オバサンになっても、お婆さんになっても好きだ。いや、まりちゃんは、お爺さんっぽくなるのかもしれないが。あいつが、お婆さんだろうとお爺さんだろうと、化け物だろうと、ああ、そんなことはどうでもいい。どうでもいいのに。

この恋は、多分、覚めるということがない。あの外見を乗り越えているんだ。もう、その崖、登りきったら、あとは、墜落しかない。きっと、死ぬまで、恋したままだ。

残りの高校生活は、つらいものになりそうだ……。

まりちゃんは、絶対零度の宇宙どころか、俺を、地獄に突き落としやがった、しかも、やすやすと。彼女自身、気付かないうちに。

俺あ、馬鹿だ。馬鹿みたいに、まりちゃんに、恋してる。

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あきゅろす。
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