禁じられた恋のナミダ※連載休止中 6 マリアを日本に連れ帰ることを決めた武蔵出は、その許しを得るまで、マリアの家に居座ることにした。 振り仰いだ空は広い。草原に木造家屋が点在している。 異国の地なのに、日本の田園光景に似通うものがある。 日本でのことが、遠い昔のように感じていた。 ここで農夫になるか………。この地での労働を、無理に換算してみれば、時給30円にも満たない。 娘がいきなり連れ帰った外国人に、怒りの拳を振り上げた父親をわき目に、大家族に混じり込んだ。朝から晩まで、男手の役目を果たす。カメラを放り出して、鍬を取った。畑を耕し、家畜の世話をする。 半月もすれば、家族と同じものを食べても腹を下すこともなくなった。毎日鍬を握る手のひらには、大学ラグビーで作ったものとは別の場所に、タコができていた。 大家族の子どもたちが、好奇心の塊になって、近づいてきては、言葉を教えてくれた。 ほどなくして、マリアの父親は、振り上げた拳を下ろすことになった。若く逞しく聡明な武蔵出は、申し分のない婿であることは、傍目にも明らか。 武蔵出の来訪以来、村中の者から羨望の眼差しで見られるようになった娘の選択に間違いはない。 すっかり大家族に馴染んでしまったころ、武蔵出は、婚姻の許しを与えられた。未婚の女は父親に従い、婚姻後は、夫に従う。そうなれば、どこに連れて行こうが、口出しはできない。 村での結婚式は、一晩中続いた。その翌日、幸福な二人は、妻の故郷を旅立つことになった。ただ、幸福な未来のみを見て――― [*前へ][次へ#] [戻る] |