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禁じられた恋のナミダ※連載休止中
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目覚めたナオは、目が潰れそうなほど眩しい光に照らされていた。いくつものライトが、ナオに向けられている。

起き上がろうとして、手足も首も胴体も、固定されていることに気づく。僅かに動かした背中や手足の裏側で、冷たく平らな金属を感じ取る。

台の上に、寝かされている。何も身にまとわない体に、薄い布がかぶせられていた。

眩しさに慣れてくると、そこが、テレビで見たことのある手術室のような場所であることが分かってきた。何に使うのかわからない器具、液体の入った瓶、低くうねる電気機器が並んでいる。いくつもあるカメラが、いろいろな方向からナオを捕えている。

「お目覚めかい?」

声のほうを向こうとしたが、頭を動かせないナオには、それができなかった。

「おはよう、殺人機くん。殺人鬼ではなくて、殺人機だろうね、きみはきっと」

目の前に、見下ろす顔が現れた。温和な左目が見下ろしている。右目は影になっていて見えない。口元には、優しげに笑みを浮かべている。空港の男は、スーツの擬態をぬぐい去り、筋肉を誇示する黒いランニングシャツに身を包んでいる。

脇から、女性の声が聞こえた。

「被験者のデータです」

明るくなったパネルは、ナオからも見えるところにある。

人体を模した図の横に、文字と数字が並んでいる。身長、体重ばかりか、指一本の関節の長さに至るまで、細かな測定データが添えられていた。白血球の割合、髪の毛の組成までも、調べ上げられている。物理現象としてのナオは、髪の毛一本に至るまで、詳しく解析されようとしているのだ。目の前では、新たな項目や数字が加わった。別の部屋で、ナオから採取された細胞は、今現在も詳しく解析され続けているのだ。

「ヨンファ。相変わらず、きみの被験者への測定はマニアックだね。とても好きだよ」

「武蔵出副本部長の被験者への執着ぶりには、及びません」

「ここでは、副本部長ではない。そう呼ぶな」

「わざと呼んでいるんです。嫌がらせです」

ヨンファと呼ばれた女性の声は、無機的だ。冗談なのか本気なのかもわからない。

「手術痕や銃痕などは、まったくありません。この少年は、まるで、かすり傷一つ受けたことのないような、無傷ぶりです。ただし、一か所以外は」

ヨンアは、画面を変えた。データの映像は消え、足が現れる。細い指は四本しかなかった。

「この子は、左足の小指を失っています。最近のことですわ。レーザーメスの切り跡ではありませんが、傷跡は綺麗に完治しています」

ナオの足元で、布がめくられた。
 
ナオは、左足が、ごつごつとした手で触れられるのを感じた。拘束された身を微かによじらせた。吐き気を覚えるが、吐き出すものなど、胃の中に何も残っていない。

「なるほど……。いい切り口だ。かなりの腕だな」

武蔵出は、いくばくかの興味を見せて、ナオの失った場所に触れた。触れるたびに、ビクビクと小さな足が震えている。

吐き気がひどくなって、ナオの喉元には、胃液が込み上げてきた。涙も滲んでくる。

「やめたほうがいいですわ。この子、泣いています」

被験者への入れ込みがいつも激しくなるヨンファは、すぐにナオの様子に気づき、清潔な布をナオの顔に当ててきた。ナオに見えるのは、手のひらだけだが、その手の柔らかさが、ナオを静めた。柔らかい手が、ナオの唇と目とを、そっと拭う。

しかし、拭っても、一度流れ落ちた涙は、堰を切ったように止まることがなかった。

「あら……可哀相に」

思わずナオを覗き込むヨンファ。その顔は無表情だった。

眼鏡の奥に、清らかで切れ長な目があった。とても美しい顔立ちだが、どことなく狂気じみた光を、その切れ長の目の奥にひそませている。眼鏡の金ぶちと、細い指先の赤いマニキュアが、マッドサイエンティストの香りを、際立たせている。

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