証―彼は僕のものになる 彼ヲ想イ、トキドキ、迷宮ニ墜チル この想いのベクトルの深さは、恋と呼ぶほかない。この恋は、劇薬となって、僕を何度も殺す。 死に場所はない。死に場所は、彼に、持っていかれた。彼が、僕の、死に場所。すべて、愛のある場所。世界のあるところ。 僕が、彼を失ったとき。それはつまり世界を失い、僕を失い、視覚も聴覚も味覚も触覚も何もかも失ったというとき。 先立つ、なんて、あまりに、残酷な仕打ち。 自分が死ぬより残酷な、殺されるよりもヒトデナシな。 僕は、ときどき、迷宮に堕ちる。今だ、彼を想っては、迷宮の沼に足をからみとられる。 彼を失って、世界に明かりを失って、行く先を失っている。 逢いたい。 失いたくない。 ナシでは生きて行かれない。 どうして、消えてしまった。 愛している。 ひとりぼっちでいかせてしまった。 哀しみも怖さも、ひとりぼっちで、持っていかせてしまった。 優しい微笑みを残して、そして、消えた。 もっと、抱き締めたかった。 できるなら、痛みと苦しみ恐怖から守ってあげたかった。 この恋は、永遠だ。 そうだろ。 だから、僕は、今も、笑っているんだ。 彼は、僕の中で生きているのだから。 迷宮に足をとられても、それでも、前を向いて笑っていかねばならない。 愛している。 愛を与えてくれた人。愛の形状を、愛の中身を、愛の所在を、教えてくれた人。 愛している。 彼の肉体が、滅んでもなお。 僕の肉体が、滅んでもなお。 この愛は、不滅だ。 きみは僕の中で永遠となる――――― fin [次へ#] [戻る] |