私がマリアン! 02 「すみません。あの、紅茶を淹れたのですが…」 …あいつが、紅茶を? とりあえず、主人に向かってなんてしゃべり方だとかは置いておいて、立ち上がって椅子に腰掛けた。 「……入れ」 「失礼します」 片手でトレイを持つそいつの危なっかしいことといったらない。 僕の部屋を汚すなよ。 カチャと金属同士が合わさる音がする。 ティーカップは、マリアンが気に入ってよく使っていたものだった。 「どうぞ」 そう言って、一歩下がる。 …何故出て行かない。感想でも要求しているのか。 とりあえず、不味かった時の為に覚悟だけして、紅茶を飲む。 「!」 「い、如何ですか?」 如何も何も…。 「…普通だ」 普通に美味い。 僕の好みを知らないからか、甘くはなく、恐らく僕くらいの歳の男が好む分量にしてあるのだろう。 葉もちゃんと開いているし、熱さも申し分ない。 「…よかった」 胸に手を当てて肩を上下させる。 「ふん。人間、何か一つくらいは取り柄があるものだな」 何となく、ただマリアンのことへの憤りをぶつけた。 すると、そいつは少し笑って、 「ありがとうございます」 と言った。 → [*前へ][次へ#] |