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シークレット・アイドル『アキ』
作詞担当!?


光の着替えが終わり、輝の持ってきたクッキーをつまみながら、明は本題を切り出した。


「そうそう、ねーちゃん。歌手デビューってどういうことだよ」

「あら、情報早いわね。流石」

「流石じゃねぇよ!俺、歌なんてぜってー歌わねぇから!」


光はレモンティーを飲み干しカップを置くと、明を睨みつけた。

その鋭い眼光に、三人は一瞬たじろぐ。


「あんた……歌がどれだけ素晴らしいか知らないの?」


光らしくない言葉に、明は首をかしげた。


「ねーちゃん、歌好きなのか?」

「作詞、作曲、著作権。CDが売れるたび、カラオケで歌われる度にお金が入るのよ!?」


明は無言で肩を落とす。


「もちろん、作詞・作曲は輝で、監修はあたしがやるわ。交渉も進んでるから大丈夫よ。印税ががっぽり入るように、ね」

「って、だから歌わないっつーの!」


光はわざとらしくため息をつく。


「あんたはどうして……あたしのお金儲けに協力してくれないの!?」

「だいたい素人の歌で金取ろうなんて考えが甘いんだよ!」

「馬鹿ねー。あんたがフリフリの衣装着て可愛く踊りながら歌えば文句なんか来ないわよ」


二人の言い争いを、芽衣子はレモンティーを飲みながら聞き流していた。


「これ美味しいですね」

「流石芽衣子だな。レモンティーに合う茶葉を頑張って探したんだ」


ニコニコと屈託のない笑みを浮かべる輝。

光と輝は二卵性の双子だが、性格から能力からまったく正反対だ。


光は頭の回転は速いものの、技能は中の上といったレベルだ。

それに対して輝は、全てにおいて素晴らしい力を発揮するが、頭が回らないのが難点だった。


二人はよく芽衣子の面倒を見てくれ、今でも兄弟同然に仲良くしてくれる。

独りっ子の芽衣子は、それがとても嬉しかった。


「それにしても輝さん。作詞・作曲もできるんですね」


芽衣子が感嘆の言葉を漏らすと、輝はうーんと唸った。


「でも、『アキ』が歌うのは年頃の女の子の歌だろ?俺に作詞とかできるかなぁ」


「そうよ!」


明と口論を続けていた光がいきなり叫んだ。

なんだなんだと三人の視線が光に集中する。


「芽衣子が歌詞かけばいいのよ!」


光の言葉に、芽衣子は思わず「は!?」と大きな声を出した。


「そうよそうよ。なんで思いつかなかったんだろ」


一人で頷く光に、芽衣子は慌てて両手を振る。


「むっ、無理ですよ!あたし、作詞なんかしたことないし…」

「だーいじょうぶだって。細かいところは輝が修正入れるから」

「俺かよ。まぁ、いいけど」

「無理ですよっ!」


尚も嫌がる芽衣子に、光はそれに…と続けた。


「芽衣子が作詞なら、明も歌うでしょ?」

「え?」


明の視線が、芽衣子を向く。

芽衣子は慌てて視線を逸らした。


「…いいよ」

「えっ!?」

「芽衣子がやんなら俺、やる」


「はーい、決まりー!じゃ、芽衣子よろしく〜」


光は芽衣子に原稿用紙を渡すと、下に降りていった。


「頑張れよ」


輝もニコニコしながら下に降りる。

残された芽衣子は、肩を落とし、座りこんでいた。


「…芽衣子さーん?」

「帰る」

「えっ!?」


突然立ち上がった芽衣子に、明はおろおろとしながら着いて行く。


「悪い!その…変なこと頼んで…」

「…るから」


「え?」


明が聞き返すと、芽衣子は顔を真っ赤にして明を睨んだ。


「帰って書いてくるから!中身悪くても文句言わないでよね!」


そのまま、芽衣子は踵を返す。


「あっ、芽衣子!」


振り返った芽衣子に、明はニカッと笑った。


「じゃな!」


芽衣子は小さく、バイバイ、と呟いた。






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あきゅろす。
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