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シークレット・アイドル『アキ』
守銭奴と天然


「ねーちゃんっ!!」


学校が終わってすぐ、明は芽衣子を連れて家に帰った。

彼の姉である中塚光の部屋に向かい、扉を開けると同時に叫ぶ。


「ん?」


振り返った彼女は、ちょうどセーターを脱ぎかけたところだった。


「ひっ、光さん!」


「あ、芽衣子ちゃんいらっしゃーい」


上半身の衣服を脱ぎ捨て、下着だけの状態で光は微笑む。


無駄に色香を振り撒くそれに、芽衣子はドキッとした。


「姉ちゃん、聞きたいことがあるんだけど!」

「何よ。内容によって値段は変わるけど」

「実の弟に金取んな!」


明は動じることなく光と対峙する。


「俺が聞きたいのは…」


「ひぃかぁりぃーーー!!!」


突然、階下から唸り声が聞こえ、ドタドタと誰かが階段を上がってきた。


バタン!と音をたてて開かれた扉の向こうには、光の双子の兄で明の兄、中塚輝が立っていた。


「あ、おかえり輝」

「おかえり兄ちゃん」

「おぉ、ただいま………じゃない!」


輝は未だに下着姿の光に向き直り、一冊の雑誌をつきつけた。


今朝芽衣子たちが読んでいた雑誌だ。


「これ!なんでこんなとこに掲載されてるんだ!?」

「流石輝よね。あんたに頼んで正解」


「違うっ!!俺は戦争で苦しむ外国の子どもたちに役立つからってこれ合成(つく)ったのに!話が違うだろ!」

「いやいや…」

「水着写真で流石にそれは…」


明と芽衣子が呆れた声を出すが、輝は聞かない。


光はニコッと微笑み、輝に言った。


「だから、その分の取材料と写真料を、外国の子どもたちに役立てるんじゃない」


「え…」


輝は目を見開き、前のめりだった姿勢を徐々に直していった。


「そ、そうだったのか…」

「「いやいやいや…」」


「そうとも知らず、悪い」


申し訳なさそうに後ろ頭を掻く輝の肩に、光がポンと手を置いた。


「気にしないで、我が半身。という訳であたしは今から寄付する手続きを踏まなきゃいけないから、レモンティーとクッキー持ってきてくれる?」

「わかった!あ、芽衣子も食べるだろ?」

「あ…はい。じゃあ、いただきます」


上機嫌で輝が出て行ったあと、明は呆れて光に向き直った。


「姉ちゃん、いい加減兄ちゃん利用すんの止めてやれよ」


「何言ってるのよ。輝は、自分の技術が役に立った、と思い込んでハッピー。あたしは、お金が入ってきてハッピー。二人ともハッピーなんだから、最高じゃない」

「我が姉ながら外道だ…」


「…ていうか、そろそろ服、着ません?」






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