美食日記
03
「そんなことが…あったあるか」
私が菊さんとの出会いを話すと、耀さんは深くため息を吐いた。
「あの…耀さんは、菊さんとどういうご関係なんですか?」
「…兄弟ある」
耀さんの言葉に、やっぱり、と自分を殴りたくなった。
「正確には義兄弟あるね。我たちは中華料理屋の店主に貰われたある。湾も、ヨンスも、もう一人の弟もそうある」
「すみません。私…」
「気にすることはねぇある。久しぶりに菊の顔が見れたあるから満足あるよ」
そう言って、耀さんは微笑みながら私の頭を撫でた。
眉尻を下げて、少し伏し目がちに微笑った耀さんの顔に、私は胸が締め付けられたような衝撃を受ける。
耀さんは立ち上がり、私に言った。
「…何か食っていくあるか?」
「あ、はい。じゃあ…」
耀さんは厨房に戻って行った。
「…やっちゃったなぁ」
まさか、耀さんが菊さんのお兄さんだったなんて。
でも、あんなの……悲しいよ。
「どうすれば…いいんだろ」
私がテーブルに突っ伏して悩んでいると、頭上から耀さんの声が聞こえた。
「何やってるある。料理がおけねぇあるからどくよろし」
「え…」
料理が来てた!?嘘…いつもは出来た時点で気付くのに…!
どうしたんだろうと首をかしげる。
「さぁ、食うよろし」
「いただきます」
目の前に並べられた料理に、何故かいつもより心が躍らない。
パリッと焼けた餃子を口に放り込む。
「!」
おかしい。
味が………しない。
パリパリの皮も、溢れ出す肉汁も、キャベツのシャキシャキ感も、何も感じない。
ハッとして、目の前の耀さんを見ると、
彼はこちらを見ず、窓の外をぼーっと眺めていた。
また、私の胸が締め付けられた。
ゆっくりと箸を置く。
「あの…耀さん」
「…何あるか。今日は随分無口あるね」
耀さんは窓の外を見たまま答える。
「菊さんと…どうして、別れて暮らしているんですか?」
思い切って言うと、耀さんは少し目を見開いて、私を見た。
少し間をおいて、話し始める。
「…菊とは、昔から喧嘩が多かったある。我は菊を店で働かせたくて、菊は自分の夢を叶えたかったある。気が付いたら、菊は家を出たあるね」
ゆっくりと、耀さんは語る。
「もう、一緒に暮らさないんですか…?」
「菊が、望んでないある」
「そんな…」
嘘だ、そんなの。
だって菊さん、寂しそうだった。
…私は関係ない。
首を突っ込むべきじゃない
そんなの、わかってるけど…!
「耀さん!」
急に立ち上がった私に、耀さんは少し驚いた。
「な、なんあるか」
私は耀さんの目をじっと見据えた。
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