美食日記
02
「お茶淹れるから、待っとってな!」
トマトの持ち主の家(凄く散らかっている)にあげられ、物を避けながら耀さんと座る。
持ち主は台所に飛んで行ってしまった。
「…我は買い物中だた筈なのに、どうしてこうなってるある」
「す、すみません…」
「別にいいあるよ」
だってあの人超怖かったよ!?いや悪いのは私。でも怖すぎた。
「…お前」
「はい?」
「なんで最近ウチ来ないあるか」
耀さんが若干ムスッとして言った。
なんでって…ちょっと、黙って出てったのが気まずかったから、かな?
「えへへ」
「笑って誤魔化すなある」
「耀さん私に会いたかったんですか?なんて」
「アホなこと言ってんじゃねーある。毎回毎回ウチにツケで食べに来てたクセに偉そうなこと言ってんじゃねーある。別に我は気にしてないある。ヨンスも湾もたまに来る菊ですらお前がいないいないってうるせーあるよ。迷惑してるある」
耀さんの顔が険しくなり、マシンガントークが飛び出る。
「だいたいなんあるか久しぶりに顔を見たと思ったらつまみ食いで怒られてベソベソ泣いてるなんてにーには恥ずかしくて泣けてくるある。たまたま我が買い物の帰りに通ったからよかったようなものを。お前はもう少し自分の食欲抑えることを覚えるあるよ。動物じゃあるまいし目の前にある物全部食っててどうなるあるか。それから」
「もうほんと勘弁してください」
そのまま床に頭を付けるとやっと耀さんのマシンガンが収められた。
「おっ。二人で何話してんの」
「!!」
お茶を持ってきた持ち主さんに、私は咄嗟に耀さんの背中に隠れる。
「…そ、そんなビビらんといてーな」
「す、すみませんでじた…っ」
苦笑する持ち主さんに、床に頭を擦りつける。
「ちょお!女の子がそんなことしたあかんあかん!」
「で、でも」
「俺もあんな怒って悪かったわ。えーと…あんた名前は?」
「ひっ!個人情報…!?」
「いやいや!何に使うつもりもないわ!」
耀さんがため息をつく。
「そいつは名前っていうある。高校生あるよ」
「なんやJKかいな!って、なんで耀はJKと知り合いなん?」
「弟の友達で店の常連ある」
「そうかそうか」
持ち主さんは私ににっこり笑って手を差し出した。
「俺はアントーニョ・フォルナンデス・カリエドや。長いし、アントンとかって呼んでな」
「あ…よろしくお願いします…」
おずおず手だけ出してアントンさんと握手を交わす。
「名前ちゃんはよっぽどひもじかったん?」
「いえ、あの…」
「ん?」
「あんまり美味しそうで…つい…ごめんなさい!」
アントンさんは少し驚いて、それからニカッと笑った。
「なんやー!ウチのトマトがあんまり美味しそうやき食べてしもうたんやな!?」
「は、はい」
「名前ちゃんわかっとるなー!でもつまみ食いはあかんよ?今度から食べたかったら俺に言うてな?少しやったら分けたるで」
「え…ほんとですか!?」
なんだこの人超いい人じゃん!怖いとか言ってごめんなさい!
耀さんを見上げると、頭を撫でてくれた。
「おーい。帰ったぞー」
玄関が開く音と、男性の声が聞こえる。
「ん?」
「なんだ客か?って」
ひょっこり顔を出した人物は、
「ロヴィーノさん!」
「名前!?なな、なんでお前ウチにいるんだ!?」
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