美食日記 05 私は菊さんの腕を引っ張って、耀さんのお店へと連れてきた。 店の前で立ち止まると、菊さんは困った顔で私を見た。 「名前さん…」 「ここの中華、すっごく美味しいんですよ!食べなきゃ損です!」 私は笑って、菊さんの腕を引っ張る。 しかし、菊さんはその場から動かない。 眉をひそめ、言葉を選ぶようにしている。 「名前さん、申し訳ありませんが…」 「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ!」 「は?いえシ○ジ君とかではなく…」 「違うんです」 私は力の抜けた菊さんの腕を引っ張る。 菊さんはよろけ、私に近づいて、見下ろした。 菊さんの目を見る。 「私、菊さんのお友達になれて嬉しかったんです。一緒に和菓子食べるのとか、ボケーッとするのも好きです」 「…」 「だから、私の大好きな料理、菊さんにも食べて欲しいんです。大好きな人と、仲良くして欲しいんです」 「名前さん…」 「一緒に…来てください」 私がギュッと菊さんの和服の袖を掴むと、菊さんは少し間をおいて、小さくわかりました、と言った。 「菊さん…!」 「そんなに萌え…もとい可愛らしいことを言われては仕方ありません」 菊さんはゆっくりと瞬きしたあと、言った。 「私も日本男児です。覚悟を決めます」 「ありがとうございます!じゃ…行きましょう!」 「ええ」 [*前へ][次へ#] |