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美食日記
02


「お待たせ」


上から降ってきた声に顔を上げると、皿を持ったフランがいた。

優雅に皿を並べていく。


「フラン。お店の方は大丈夫なの?」

「今はお前らだけだから大丈夫。たまにはお兄さんも入れて話そうぜ〜」


フランが椅子を持ってきて私の隣に座ろうとしたが、アルに睨まれ、アルの隣に座った。

私はミルフィーユを一口口に入れて、その柔らかい味わいを楽しむ。

マシューが一人でテーブルクロスを直しているのが見えたので、マシューを呼んでみた。


「マシューも一緒にどう?」

「え?僕も?あの、フランシスさん…」

「ん。ちょっと休憩にしようか」

「じゃあ、僕コーヒー淹れて来ますね!」


マシューは嬉しそうにコーヒーを持って私の隣に座った。


「いやそれにしても、名前大きくなったなぁ…」

「何だいフランシス。名前をいやらしい目で見るのは止めてくれないかい?」

「ちょ、アル!?俺別にいやらしい目とかじゃないから!」

「HAHAHA!何言ってるんだい?君の目はいつもいやらしいじゃないか!」

「…お兄さん、泣いてもいい?」

「泣かないでよ。面倒臭いから」

「何これ反抗期!?反抗期なの!?」


フランは表情を戻して、感慨深げに目を伏せた。


「お前らももう高校生だもんなぁ…。昔はあーんなに小さくて、俺の後ろをヒョコヒョコ歩いてきてたのに…」

「オヤジはすぐに昔の話をしたがるな!」

「フラン、最近多いね。昔話」


オヤジというワードにグッと堪えたフランは、私を見てニヨニヨと笑いだした。


「どうしよう、アル。フランがきもい」

「大丈夫だぞ、名前。俺も同意見だ」

「昔名前は『フランシス』が上手く言えなくて、仕方ないからフランって呼んでたんだぞ〜?」

「あー。殴りたい。美味しいお菓子が目の前になかったら絶対殴ってる」


私はそう言って、マドレーヌをかじる。

しっとりとした生地に、甘くほんのりと香る、レモンとバターの風味がよく絡み合う。


「ほわぁぁぁ……」


顔面が崩壊する私に、三人が苦笑した。


「ホント、名前は美味そうに食うね〜」

「だって美味しいもん!」

「君は昔からフランシスのマドレーヌが好きだよな!」

「だって美味しいもん!」

「名前、コーヒーおかわりいる?」

「だって美味しいもん!」

「え!?」






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