[携帯モード] [URL送信]

拍手




 雨竜を初めて昼食に誘った日から、一護が毎日昼休みに雨竜を誘うのは恒例となっていた。最初の頃はばっさりと容赦なく断っていた雨竜も、しつこく誘う一護に絆されたのかただ単に面倒になっただけなのか、時々は屋上へ行き一護たちと共に食事をするようになった。
 正直に言うと、恋次は今でも雨竜と一緒の食事というものに慣れないでいる。それは別に雨竜が恋次を遠ざけているからだとか、怖がっているからだとかいうわけではない。一護の幼馴染なだけあって、彼女は恋次が近くにいてもいつもとなんら変わりない様子であった。それも、初めて共に食事をしたときから、男子の中に一人というこの年の女子にとっては異常なことにもかかわらず、である。
 遠ざけているのは、むしろ恋次の方なのだ。望まずとも髪の色や生まれ持った容姿のせいで喧嘩を仕掛けられることの多い恋次は、優等生と称されることの多い雨竜のような人種と馴れ合ったことがない。逆に冷たい目で見られることが多かった。だから、彼女とどう接していいのかわからないのだ。
 しかしそう思っているのは恋次だけで、一護はもちろん、水色や茶渡は当たり前のように彼女を受け入れている。初めは怖がっていた啓吾も、なんだかんだと言いながら受け入れ始めているようだった。というよりも啓吾の場合は、恋次が見る限り相手が女子というだけで受け入れることができるらしい。便利な作りをしているとつくづく思う。
 石田雨竜は悪い奴ではない。少々無愛想ではあるが、外見だけで人を判断しないいい奴だ。それはわかっている。
 それでも、恋次は未だに彼女や彼女と一緒の時間に馴染めなかった。特に雨竜を意識しているわけではない。彼女が嫌いというわけでもない。けれどただ、雨竜のいる空間に恋次は中々慣れることができなかった。
 もしかしたら雨竜のことが苦手なのかもしれない。
 そう思い始めたら、僅かだけど食事の時間が苦痛になってしまった。



next

[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!