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「一緒に飯食おうぜ」
 周りの生徒たちはようやく待ちに待った昼休みが来たと少々浮足立ちながら、仲のいい友達と思い思いの場所で昼食をとろうとしていた。一護もその一人であることに変わりなかった。ただ、彼が誘った相手がいつも一人で読書をしているような優等生であることを除いては。
 確かに周りの生徒はあの二人が幼馴染であることを知っている。普段から何かとちょっかいをかけている様子も知っている。けれど、こんな風に昼食を誘うことは初めてで、周りの者は興味津々といった感じで二人の動向を見守っていた。色恋沙汰に過敏になる年頃なのだから、当たり前と言えば当たり前だろう。
 恋次も他の生徒たちの例に漏れず、けれど僅かに呆れの籠った視線で二人を見ていた。こんな風にしたらあることないこと言われるのはわかりきっているはずなのに。
 現に、一護を通じて知り合った水色は目を輝かせて二人を見ていた。
「断る」
 しかし、周りの期待に反して雨竜の返答はあまりにもあっさりとしていた。視線さえ一護にやらない。
「なんでだよ」
「その台詞を言う権利は僕にある。なんで君と一緒に食べなければいけないんだ」
「……可愛くねえ奴」
「可愛くなくて結構だよ」
 未だに一護を怯える生徒がいる中、雨竜が一護にはっきりと物を言う姿は中々新鮮だった。やっぱり幼馴染なのだと、恋次は変なところで感心してしまう。
「屋上にいるから、気が向いたら来いよ」
「そんなことは百パーセントないから安心しろ」
「テメッ……!」
 これ以上何かを言っても無駄だと悟ったのか、一護は青筋を立てながらいつものメンバーの中に戻って来た。
「一護にしては大胆だね。とうとう自覚したの?」
 いつもの笑顔で一護に話しかける水色は、これ以上ないほど輝いていた。
「そんなんじゃねえよ」
 雨竜に断られたことを未だに引きずっているのか、一護の眉間の皺はいつもの五割増しだ。
「……ただ、これ以上あいつを一人にしておくのはもう止めにしたんだ」
 そう言った一護の表情は何処か思い詰めたもので、恋次は思わず水色たちと顔を見合わせた。



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