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Long
同居2週間目。
 







クモリが僕の家にやって来てから、早いものでもう2週間になる。最初こそビクビクしていたが、今はすっかり慣れてくれたらしい。
僕が出すご飯も警戒せずに食べられるようになったし、突然触れても驚かなくなった。
自分から僕に触れてくることはまだないが、これは大きな進歩だ。

怪我が治るまでに、なんとかクモリを守れるような策を考えなければ。僕はソファーに体を埋めてぼぉっと照明を眺めていた。考えれば考えるほど煮詰まっていく。


「何とかならないものですかねぇ…」


僕は一つ溜め息を吐いて、まとまりそうにない考えと格闘していた。
ああでもない、こうでもないと思いを巡らせていると、腕に違和感を覚えた。ふと見ると、クモリがソファーの前に座っていた。そして、鼻先で腕に触れていたのだ。
クモリの目線は、例の腕の傷跡と僕の顔を行ったり来たりしている。クモリに噛まれたところは、傷跡こそ残っているが痛みはほとんどない。傷跡は消えるかどうかはわからないが、日常生活に支障はない。


「クモリ?どうしたんですか?」


反対の腕で優しく頭を撫でながら聞いた。すると、クモリは徐に傷跡を舐め始めた。
僕は驚いて思わず体を震わせてしまった。今まで自分から触れてきたことなんてないのに、こんな風に触れられると焦る。
クモリは何か訴えるような目で僕をじっと見ていた。そして、切なそうに喉をきゅうっと鳴らした。


「もしかして、まだ気にしていたんですか?」


そう聞くと、クモリは許してくれと言わんばかりにもう一度傷跡を舐めた。そんなクモリを行動を、僕はひどく愛しく思ってしまった。


「もう大丈夫ですよ。クモリは本当にいい子ですね」


自分がしたことをきちんと反省して謝ることは人間でも難しい。それにとても勇気のいることだろう。
それも、クモリが全て悪いわけではないのに。


「優しいんですね」


そう言って頭を撫でてやると、そっぽを向かれてしまった。その行動が照れているように見える。何となく人間のような行動だと思った。


「クモリが人間だったら、きっと女の子が放っておきませんね」


美しい容姿を持ちながら、寡黙で、優しくて。想像すると少し可笑しい。
思わず笑ってしまった僕を、クモリは責めるような目で見た。

平和だと思う。いっそこのままでも良いんじゃないかと思ってしまうほどに。


「クモリが人間だったら、か…」


馬鹿げた妄想だけど、それはそれで楽しいだろう。
僕は煮詰まった考えを一旦捨てて、楽しい楽しい現実逃避に身を投じた。







end.







終わらせ方がわからなかったんだ。









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あきゅろす。
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