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それは嵐の予兆にすぎず



『…見つけた』


やっと…やっとだ。
3年間、俺は探し続けた。君がいなくなってから。あの日の真実を知ってから。
ちょっと強い女がいる、って情報が入れば、どれだけ離れていようと飛んで行った。
だけどやっぱり宇宙は広くて、なかなか君は見つからなかったよ。
だからさ、君が地球にいるっていう確かな情報を阿伏兎から聞いた時、すごく嬉しかったんだ。



俺も随分と女々しくなっちゃったもんだね。



ねぇ、冴?
俺達は、やっぱり一緒にいるべき運命なんだよ。

もう、君を離さないよ?
離させはしない…絶対に。





―――――


私はこの間の遊園地の一件を報道番組が大きく取り上げてしまった性で、周りに自分が夜兎だとばれてしまった。もちろんバイト先も例外ではなく、事件の翌日、バイト先に向かうといつもとは明らかに違った周りの態度。ハッキリ言って辛かったが、


「よォ」

『あ、銀さんいらっしゃい』


退や土方さんや沖田さん、それから銀さん達のお陰で、なんとか私も笑ってられた。

特に銀さんは事件があってから、毎日欠かさず私の勤めている団子屋に来てくれる様になった。


「いつものね」

『はーい』


彼は特にそんなそぶりを見せないけれど、恐らく彼なりに、私に気を使ってくれているのだろう。


『どうぞ』


コト、と彼の右隣りに団子の乗った皿を置く。


「…あれ?」

『どうしました?』

「コレ、1本多くね?」

『それは…サービスです』


銀さん、ありがとう。伝わるかはわからないけど、できるだけ気持ちを込めてふわりと優しく微笑めば、


「…サンキューな」


彼も優しく微笑んで、サービスしたみたらし団子をぱくり、と頬張ってくれた。

事件から1週間がたった今では、周りの態度も少しずつではあるが、元に戻りつつある。(これも銀さん達のお陰だろうか?)



そして今日もいつも通り、バイト先から自分の家に帰ろうとしていた。


「……冴?」


そんな時、後から誰かに声をかけられた。


「あ、やっぱり冴だ」

『!!』


最初は、聞き間違いかと思った。でも、間違える訳もない。

懐かしい、声。
大好きだったあの人の、私の名前を呼ぶ声。


「元気だった?」


忘れもしない、愛しい桃色の髪。
吸い込まれてしまいそうなマリンブルーの瞳。
前に見た時よりも少したくましくなった身体、
長くなったみつあみ。


そう、私の目の前にいたのは


『……神、威…』


元婚約者の姿だった。












それは嵐の予兆にすぎず

冴、綺麗になったね

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あきゅろす。
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