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そして彼女の噂は
「誰…?」


そう言った彼女からは、恐ろしいほどの殺気が溢れ出ていて、思わず鳥肌が立った。


『…冴?』


いくら俺が呼びかけても、反応はない。どうやら、俺の声は彼女に届いていないらしい。


そして次の瞬間、


ザシュッ


「うあああああッ」


1人の攘夷志士が大量の血を吹き上げ、断末魔の叫びをあげながら倒れた。あまりに一瞬の出来事だった。


「な、何者だ!この女!!」


周りにいた攘夷志士達も、先程とはまるで別人の様な変わり様に、驚きを隠せないでいるらしい。



「ギャァァァアアッ」


次々に周りにいた他の攘夷志士も血まみれになって倒れていく。


「キャーーーーッ」


周りにいた野次馬達もなるべくこの場から離れようと逃げて行き、園内はまさにパニック状態。


しかし彼女の顔は心なしか楽しそうで、それは本能のままに、彼女の中に眠っていた“夜兎の血”のおもむくままに、身体を動かしていることを物語っていた。





―――――


意識が戻った時、私は全身血まみれだった。周りには、先程まで退を攻撃していたはずの攘夷志士達が私と同じく血まみれになって横たわっている。


「…冴?」


退が、怯えている。
周りにいる人が、怯えている。

嗚呼、やってしまったんだ。
自分に負けてしまった。
ブレーキが効かなかった。


自分自身に、夜兎の本能に負けてしまった悔しさと情けなさで、その時私は真っすぐ前を向くことができなかった。












そして彼女の噂は

宇宙へと広がる

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あきゅろす。
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