姫を探して三千里
「……またいなかった…」
今日もまた1つの星を潰し終えた団長の表情は、やはりどこか淋しげだった。
一体この星で、いくつ目だろう。3年前、冴が俺達の元を去ってから、団長は変わっちまった。
どの星に行っても、やることはただ1つ。探すのはただ1人。仕事になんかなりゃしねェ。
そして増えていくのは次々に滅んでいく星々と、俺が書くハメになっていく始末書の山のみ。
こちらとしては、本当に勘弁してほしい限りなのだが、団長が今でも団長の探し人である、彼女を想い続けていることは明らかで、それはそれは見ているこっちまで切なくなってくる程だ。
冴がいなくなった後も、副団長の席だけは空けておこうとしているのも、やはり今でも彼女を想っている故の行動なのだろう。
そういえば、冴がいなくなってから、張り付けた笑顔なんかじゃなく、心から笑っている団長を見たことがあっただろうか?
冴がまだ春雨の副団長“春雨の風矢”として宇宙に名を轟かせていた頃、団長は確かに笑っていた。
いや、今でも常に笑顔なのだが、もっと心から笑っていた気がする。
そして先程の疑問、おそらく答えはNOだろう。
“無くして初めて気づくこともある”と言うが、団長は正にそれだった様で、冴が去って行った最初の3ヶ月は、裏切られたという悲しみと、怒りと、驚きで団長が暴れ回った結果、春雨の船内は大変なことになっていた。
その後、冴が春雨を去って行った本当の理由を知った後、団長はやっと暴れるのを辞めたのだが、その代わりとして始まったのが、この宇宙を股にかけた冴探しだ。
しかし、彼女がどこの星へ行ったという手がかりがある訳でも無かった俺達に、限りなく広い宇宙のの中から、たった1人の女を探し出すのはとても難しく、冴探しは難航していた。
「…ねぇ、阿伏兎?」
『どうしたんですか?』
「冴…、どこにいるのかなぁ…?」
そう言った団長の顔を見れば、お世話にも上手とは言えない張り付けの笑顔。
なァ、冴?
お前もすげェ女だ。あの春雨の雷槍を、ここまで骨抜きにしちまうんだからよ。
だけど俺はもう、こんな団長見ちゃいられねェよ。
だから頼む、
姫を探して三千里
戻って来てくれ…
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