月冴ゆ
3年前、私には婚約者がいた。
名前は神威。
私と同じく夜兎族で、桃色の髪に、吸い込まれそうなマリンブルーの瞳が特徴。そして尚且つ彼は、誰もが知る、あの宇宙海賊春雨の第七団師団長様で“春雨の雷槍”としても名高い。
私も当時、彼の率いる第七団の副団長で“春雨の風矢(ふうし)”として、それなりに名を馳せていた。
大好きだった。
桃色の髪も、マリンブルーの瞳も、夜兎特有の真っ白な肌も、ちょっと俺様な所も。
だけど、私はそんな貴方を裏切った。
当時、春雨には対立している宇宙海賊がいた。
私はある理由から、その宇宙海賊と裏で手を組み、第七団を潰す計画を企てた。
そして当日、任務に出ていた神威、阿伏兎、云業の3人は、手を組んだ奴らに任せ、私は他の春雨の団員を始末した。
私は夢中になって殺した。
周りにいる、全て。
生きとし生ける物、全てを。
それからものの数十分で、戦艦の中はまるで血の海。第七団と言えど、ほとんどの戦力は私を含める4人の夜兎の力。
残った団員を始末するのは簡単だった。
そして、仕事を終え、春雨の戦艦から立ち去ろうとした時、
「…冴?」
『神威…』
その時最も会いたくなかった、貴方に見つかってしまった。
「コレ…、冴が殺ったの?」
『うん』
「…なんで?」
『仕事だからね』
「…は?」
「冴様、そろそろお時間です!!」
『わかった、今行く』
「…あいつらは?」
『私の新しい部下』
「どういう意味…?」
『どういうって、そのままの意味だよ?』
「…裏切ったの?」
『…』
「今までのは?…全部、嘘だったって言うの?」
『…さぁ?どうだろ?』
「…」
『私、もう行かなきゃ。』
…じゃあね、団長サン』
それが、貴方と私の最後の会話。
月冴ゆ
その夜、大きな満月は
私達の上で冷たく輝いていた。
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