満月の夜
『行っちゃった…』
退が見えなくなった後も、しばらく退が走って行った方向を見つめていると、明らかに私の方に向けられている2つの視線。
思い切って私はその視線を向けてた2人に向き直り、挨拶をする。
『は、はじめまして!冴と申します!』
「土方だ」
「総悟でさァ」
『…』
「…」
「…」
き、気まずい…!!
気まず過ぎる!どどどどうしよう!なんか喋んないと!!
私が自分の頭をフル回転させて、なんとか話題を絞りだそうとしていると、
「あんたァ…」
さっき自分を総悟と名乗った、可愛らしい顔立ちの少年が口を開く。
「…山崎と付き合ってるんですかィ?」
『なっ!』
いきなりそんな質問んんん!?
なんなんだこの人!一応私初対面なのに!ちょっと緊張してたのに!!
「どうしたんですかィ?顔が真っ赤ですぜィ?」
『ちちち違います!私はただの友達で…』
「へぇー?」
なんなんだ!なんなんだもうっ!!この人完全に、私のことからかってる!!
「でも好きなんだろィ?」
『な!…え、あ、ちょ…!!』
「見てれば分かりまさァ。
…あんたも物好きだねィ。あんなジミーのどこがいいんでィ?」
『じ、ジミー…』
その後も私は、土方さんが止めてくれるまで、総悟くんに同じ様な質問を長時間に渡り散々質問攻めされてしまった。
そしてやっと総悟くん達と別れた後、1人で歩いて自宅へ向かう。
『遅くなっちゃったな…』
現在の時刻は夜の8時30分を少し過ぎたところ。いくら私が夜兎だからと言っても、女の子が1人で歩くには少し抵抗のある時間帯。
退は仕事柄、今日の様に急に任務が入ることがよくあるらしい。
それでもやっぱり、退といるのは嬉しくて、楽しくて、
(今度は、私から誘ってみようかな)
そんなことを考えながら、月明かりの照らす夜道を歩く。
それにしても、
『綺麗な満月・・・』
こんな綺麗な月の夜は“あの日”のことを思い出す。
私の運命を大きく変えてしまった、3年前のあの日。
…ねぇ、貴方は覚えていますか?
満月の夜
最後に貴方に会ったのも、こんな綺麗な満月の夜だったね
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