潤と祐二のその2 楽しい楽しい霊体験 14 絶体絶命!! 「潤!」と叫ぶ祐二の声が遠くに聞こえた。 さきほどまで振り払っていた奴が俺をすっかり覆っていた・・。 息苦しさに倒れそうだった。邪悪なものが俺にとけ込むように入り込んでくる。 「にいちゃーーーーん!」「にいちゃーーーん、にいちゃ・・・」 ・・・更紗・・・ごめんな・・。 意識は、もう既に混濁していた。ダメだわ・・俺。 『喰われる・・』 「さあ、やっとごちそうにありつける」 と、嬉々とした奴の声を聞こえた。奴は更紗をも呑み込もうとしていた。 「やめろーーーー!」と祐二の刹那の声・・。 ああ・・祐二・・。ごめん・・。死ぬ時ってホント、スローモーション・・。 「・・・」何かが聞こえた。 それは励ましの声。言葉にならない声。頭に直接、語りかけてきた。暖かな・・・・。 俺は、今まで抱え込んでいた身体を伸ばし、両手を広げる。 ドクン!心臓が大きく鼓動する。 その心臓の音と共に、俺の中で何かが弾けた。目の前に虹色に輝く光を見た。 俺の身体から発散しているのだ。そして幾筋もの光となり四方に散る。 それは急速に集束されて俺を覆っていた奴を一気に吹き消した。光が奴らを呑み込んでいく・・。 光はやがて拡散する。 奴の・・断末魔の声が・悲鳴が聞こえた。 闇は光に変わる。 この世界が消える瞬間、「春・・・」と女の声がしたような気がした。女の意識は切れ切れに消えていった・・。 ....... 「う・・・ん・・」 俺は自分の部屋に倒れていた。 慌ててあたりを見回すと、更紗を抱いた祐二が立っていた。 更紗はぼんやりと遠くを見つめて、 「かあちゃん。いっちゃった・・・」と呟く。 幼い更紗に解ったのだろう。母ちゃんはもう・・いないという事を・・。 更紗ぁぁぁ。感極まった俺は二人を抱きしめた・・・はずがスカだった。 ああ・・俺だけ、のけ者なのね・・。しくしく。 「祐二、おまっ、見たか?俺様の能力(ちから)を!」 「なに言ってんだか。あれは更紗ちゃんのお母さんの力でしょ」 うぉぉぉぉぉぉぉ! くすんくすん。たまには誉めてくれたって・・。 ん?俺、生きてるジャン。 「いまごろ・・」 と、祐二が笑った。眩しい笑顔で・・。 う・・俺、まじ、やばっ。違うぞ、俺はノーマルだぁぁぁぁぁ! ー完ー [前へ] [戻る] |