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伝承異譚
−−決意−−
−−決意−−



或る日のことでした。
激しい風雨の吹き付ける夜でした。
やがて一人の若者が、城にたどり着きました。
雷に追われるように、屋敷に入ってきました。

バタン!!

しばらく振りの訪問者でした。
屋敷に入ると正面に階段が見えました。
古びては居ましたが、高価な調度類が目に入りました。
そして、階段から、一人の少年が下りてきました。
年の頃なら、17,18頃でしょうか。
あどけない顔の下には、大人の顔が潜んでいるような、
そんな少年に思われました。

女性と見まごうくらいの長いまつげ、艶やかな白い肌、
そして、肩程までの漆黒の髪、そして、黒真珠にも似た瞳。
こんな、へんぴなところには、およそ似つかわしくない、
そんな少年に、一目で若者は心を捕らわれました。

「・・君は、一人なの?」
こんな広い屋敷に、他に人の気配が無いことに気づいた若者は尋ねます。

「うん。今は、・・・僕だけです。」
少しずつではあるけれど、少年は戸惑いながら、
話し出しました。
少年の瞳は潤んでいました。
本当に人と会ったのは久しくありませんでしたから。
そして、この人の良さそうな青年は包み込むように、
暖かな眼差しで僕を見つめてくれている・・。
孤独を知らなかった少年は、
このとき、初めて、孤独を知りました。

青年は、一緒に町に出ることを熱心に勧めました。
こんなところに一人ではいるべきではないこと。


翌日の事です。

「行かないで・・。
僕を一人にしないで・・。」
少年は、青年を引き留めます。
外にでるのは、怖いけど、
一人は、もっと、耐えられない・・。

少年は一緒に行くことを決意しました。


まだ・・・・・・



自分が何者であるか知らないうちに・・・・・。





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